検索結果
●戸田博+小林厚 著●世界文化社(2023年11月)●26.2×19cm/155頁●定価3,600円(税込3,960円)
本を手にした瞬間、表紙の茶花に心を奪われました。月ごとの室礼を一年にわたって収めた写真は、いずれも粋を極め、息をのむ美しさ。これぞという花に名物や見立て、現代作家ものも取り合わせ、一期一会の茶の湯の世界を表現しています。大阪船場の茶道具の老舗が説く「心を喜ばせる瞬間をもたらす茶の湯」は、窮屈な思い込みを優しく解きほぐし、静謐な美の世界へと誘ってくれました。(空)
●三鷹市美術ギャラリー 監修●青幻舎(2024年1月)●20×14.9cm/205頁●定価2,500円(税込2,750円)
日本橋に店舗を構え、和紙や小間紙を商ってきた老舗の和紙舗榛原。200年間のデザインや歴史をまとめたアートブックです。竹久夢二をはじめとした日本を代表する絵師による手仕事が見事。江戸から続く和紙小物は色鮮やかでモダンです。四季の移ろいを絵短冊で味わい、相手を想って半切を選んでいた先人たちの姿を想像するのも一興。以前、開催された展覧会を、間近で味わえるぜいたくな作り。(薫)
●牧野健太郎 著●エクスナレッジ(2024年10月)●22.2×18.3cm/159頁●定価2,200円(税込2,420円)
長年、門外不出だったボストン美術館の浮世絵コレクション約6500点がデジタル化!本書では自由に拡大可能になった浮世絵を使って、江戸の生活を隅々までのぞいています。美術館での撮影にも立ち合った著者の解説は、明快でおもしろく、注目すべき技法や作品に隠された粋な謎かけ、遊び心を楽しめます。描かれた場所の案内もあるので、実際に訪れ、時代の変化を感じることもできそうです。(a)
●大岡信+谷川俊太郎 編●岩波書店(2020年1月)●14.8×10.5cm/392頁●定価1,200円(税込1,320円)
日本の詩歌の歴史を声でたどるという視点から、大岡氏が選んだ万葉集から近代の歌、谷川氏が選んだ近現代詩、合わせて約400作品を収めた詩歌集です。音読することで精彩を増す言葉の存在感もさることながら、一流の選者が添える解説が鑑賞を一層愉しいものにします。日々の隙間に楚々と控える文庫本のたたずまいも心憎い。何気なく開いた一篇に、一期一会を感じていただけたらうれしいです。(法)
●鈴木百合子 著●朝日新聞出版(2024年5月)●25.7×18.5cm/127頁●定価1,400円(税込1,540円)
秋田県にある大正創業の麹屋を家族で営み、こうじ茶屋の店主も務める著者。普段の暮らしと、味噌・塩麹・三五八・甘さけの作り方、料理のレシピを紹介しています。米麹とご飯に塩をまぶすだけですぐに使える「三五八」は、水っぽさがなく炒め物などにも合う、ぜひ使いたい調味料。洋風でも和の素朴さが感じられるレシピは麹屋のお母さんならでは。米麹茶ミルクティー、ほっと温まります。(玲)
●飛田和緒 著●オレンジページ(2024年11月)●24.2×18.4cm/114頁●定価1,600円(税込1,760円)
家族に「え、どうしたの? お店みたいだよ!」と言われるのがうれしくて次々に作っています。手間がかかった料理に見えるのに簡単に作っているのは内緒で。刺し身や切り身を使うものがたくさん載っているので手軽に取り組めます。魚は火通りがよく意外にも時短料理。安く売られている旬の魚を使うので季節を楽しむ献立になるのも健康的。3年間の雑誌連載をまとめたお得な一冊。(友)
●中山有香里 著 中村りえ レシピ制作●KADOKAWA(2025年1月)●21×14.9cm/155頁●定価1,300円(税込1,430円)
クタクタに疲れて歩く道で急に現れた動物たちから差し出されるおいしいもの。いい匂いのえび天うどん、ふわふわのベーグル、山盛りのさつまいもごはん。人間の頑張りを認めて励ましてくれ、強引に食べ物を渡して去っていく。こんな世界があれば楽しいなあと浸れます。疲れた日こそ作りたい簡単レシピが便利。カラフルな動物たちと料理している気分で読んで食べてみてください。(友)
●地曳直子 著●翔泳社(2024年11月)●18.2×15cm/207頁●定価1,800円(税込1,980円)
研究分野で常識的なことも、一般には未知な情報が多い「油」。すべての細胞一つひとつを包むのは脂質であり、脂質が関わらない病気のほうが少ない、と著者。必須栄養素なのに知らないことばかり、が読んだ感想です。食、肌、香の使用シーンごとに選ぶポイントや、ノンケミカルな暮らしに有効なオイルの使い方を学べます。脂肪酸、脂質の丁寧な解説が知識欲を満たす充実の内容!(な)
●中本多紀 著 西本真司 監修●WAVE出版(2020年11月)●18.8×13cm/174頁●定価1,500円(税込1,650円)
耳、この小さな器官になんと200以上のツボがあり、肩こり、頭痛、眼精疲労から、免疫力アップ、依存症の改善までも見込めるとあります。フランスで体系化された耳ツボ療法は、WHOが350の病症に対し有効と認定。本書ではいつどこでもできるセルフケア15種類を紹介。リンパの流れをよくし美肌、リフトアップなど美容系もカバー。侮れないのが耳掃除!自律神経も家族仲も整える効果に期待!(な)
●天笠啓祐 著●ユサブル(2025年4月)●18.8×13cm/237頁●定価1,600円(税込1,760円)
ゲノム編集は標的の遺伝子を破壊して性質を変える技術。高GABAトマト、食欲抑制遺伝子を破壊されて異常に太ったトラフグやヒラメなどのゲノム編集食品は、日本市場のみで流通している。政府は「通常の品種改良と変わらない」とし、食品表示は不要なので知らずに食べているかもしれない。この技術は想定外の事態を起こしやすく、安全性は証明されていない。まずその実態を知ろう。(か)
●井出留美 著●筑摩書房(2025年3月)●17.4×10.6cm/266頁●定価920円(税込1,012円)
昨今の猛暑でより切実に感じた地球温暖化。しかし食品ロスから排出される温室効果ガスが、飛行機の約6倍で自動車に匹敵するという事実は意外に知られていない。食品ロスの第一人者である著者が、グローバルな視点からの問題提起と解決への道筋を解説する。「食べるものを捨てることは自分のたましいを捨てること」という言葉が耳に痛い。今すぐできることは何なのか考えさせられた。(万)
●田中慶子 著●婦人之友社(2025年5月)●18.8×13cm/223頁●定価1,500円(税込1,650円)
不登校だった高校時代。その後、奮起してアメリカの大学を卒業。同時通訳やコーチングに活躍の著者。本書は英語フレーズが自身のエピソードとともに紹介されています。建築家ミースの言葉「less is more =より少ないほうがより豊かである」から、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」、タレルのアート作品へと思いをめぐらせます。英語を身近にして、そのフレーズを口にできたらと思います。(深)
●田中ナオミ 著●主婦と生活社(2024年12月)●18.8×12.8cm/191頁●定価1,600円(税込1,760円)
著者は動きやすい家事導線やオープン収納など、時間をかけずに片づけやすい効率的な家づくりで人気の建築家。本書では自宅を例に、収納方法や家事の時短術などを写真入りで紹介している。「家事を好きになると家事が息抜きになる」という言葉に励まされ、「暮らしと住まいの上級者」を目指してできることから始めてみたくなった。60歳と言わず、すべての世代におすすめしたい一冊。(万)
●牧野伊三夫 著●亜紀書房(2024年11月)●17.8×13cm/253頁●定価1,600円(税込1,760円)
「酒・食・風呂」をこよなく愛する画家・牧野伊三夫氏のエッセイ集。ふらりと出かけ、その土地で人と出会い、食を楽しむ様子に旅心をくすぐられます。自宅のヴェランダにメジロが来るので「牧野めじろ園」を開園したものの、ヒヨドリがやって来て閉園……そんなユーモラスなエピソードも。旅とは、ちょっとした非日常を楽しむことなのかも。添えられたイラストも味わい深いです。(C)
●フィリッパ・ペリー 著 高山真由美 訳●日経BP(2023年10月)●18.8×12.8cm/354頁●定価2,200円(税込2,420円)
親子関係、人間関係の悩みに向き合ってきた英国の心理療法士の著者。実例を基に親子の絆を深める秘訣をつづります。私自身、新たな段階に進む子育ては常に手探り。「子どもとの関係を宝物のように大切にする」「安全で、愛情に満ち、頼りになり、受け入れてもらえる親子関係が何より必要」との言葉に納得しました。親のスマホ依存の影響や子育ての意味などハッとする気づきにあふれています。(薫)
●梅澤貴典 著●岩波書店(2023年2月)●17.3×10.7cm/191頁●定価900円(税込990円)※対象年齢:中学生から
ネット検索には、絞り込み検索、かたまり検索など、いろいろな方法があり、それを知ると求める情報に早くたどり着けます。しかし、自分が選択したと思っている情報が、発信側によるレコメンド機能で「選ばされている」ことも。正確な情報を得るためには、ネットと図書館を組み合わせる方法も有効。得た情報のアウトプット方法もアドバイス。賢く情報の海を泳ぎきるために必要な一冊です。(深)
●森山りんこ 著●地平社(2025年4月)●18.8×12.6cm/174頁●定価1,800円(税込1,980円)
仏教とは無縁だった著者が僧侶と結婚。お寺で暮らすうち、何かおかしいと感じる。僧侶が頂点に立つヒエラルキーの中、来客対応や掃除などの雑務に追われ、外出もままならない。やがてフェミニズムと出会い、これは男性たちが作り出した「寺の家族経営」というジェンダー不平等の仕組みだと気づく。差別に加担しないよう、お寺の役に立つことはもうしないという著者の宣言が清々しい。(M)
●太田啓子 著●太郎次郎社エディタス(2025年4月)●18.8×12.8cm/157頁●定価1,400円(税込1,540円)
日本初の女性弁護士で、のちに裁判官となった三淵嘉子をモデルにしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。ご覧になった方も多いと思います。私も虎子の最初の夫、優三の出征に涙し、二番目の夫、航一の妻への言葉に感動したひとりでした。弁護士の著者は、ドラマを通して憲法をわかりやすく解説しています。放送ではカットされたセリフにも触れ、憲法やジェンダー問題をより深く理解できます。(深)
●はらぺこめがね 作●白泉社(2025年5月)●17.7×17.6cm/24頁●定価900円(税込990円)※対象年齢:幼児から
のりで巻いた大きなおにぎり。さて、中身はなんだろう? 「ぱく!」と食べると、次々においしそうな具が登場します。しゃけやたらこといった人気具材に続いて出てくるのはなんと……? 思いもかけないオチにびっくりしつつも、やっぱりおいしそうで、子どもはきっと大喜び。おにぎりにかぶりつく楽しみを絵本で味わえる幼児〜小学校低学年向け絵本です。作者のプロフィールもぜひ読んで。(理)
●ロバート・ブライト 作 こみやゆう 訳●好学社(2024年7月)●20.7×25.5cm/32頁●定価1,700円(税込1,870円)※対象年齢:幼児から
みんなと同じがいやで南極を離れたウィリーは、町で注目の的に。でも目立ちたいわけではなかったので、蝶ネクタイや革靴を買って紳士の姿になりますが、オペラを観に行ったら同じような格好の人ばかり……。大勢の中の自分を、どうとらえるか。なかなか深い問いですが、最後のウィリーののびのびとした姿に元気をもらえます。シンプルな線で描かれた絵が生き生きとしています。(七)
●ウィリアム・スタイグ 作 木坂涼 訳●好学社(2025年4月)●23.1×20.7cm/32頁●定価1,500円(税込1,650円)※対象年齢:幼児から
雨の日の憂鬱を吹き飛ばすような、ユーモアたっぷりのゆかいな一冊。雨で外に遊びに行けず、ご機嫌ななめの少年ピートを楽しい気持ちにさせたいと、お父さんは息子を「ピッツァ」に見立てることを思いつきます。テーブルの上にのせて生地をこね(ピートの体をモミモミ)、トマトやチーズ(おもちゃ)をのせて熱々のオーブン(ソファ)へ。親子で遊ぶヒントにもどうぞ。(理)
●富安陽子 文 降矢なな 絵●福音館書店(2004年3月)●26.6×19.6cm/32頁●定価1,200円(税込1,320円)※対象年齢:幼児から
山姥の娘まゆは雑木林で鬼に出会います。ふろをわかすと嘘をついて大鍋でまゆを煮て食べようとする鬼。ところがお湯がわくと怪力のまゆは「おさきにどうぞ」と言って鬼を鍋に放り込みます。やけどして泣く鬼に、山姥かあさんがごちそうしたおにぎりと大根汁のおいしそうなこと!元気いっぱいのまゆの優しさと怪力のギャップが楽しく、図書館の幼児向けおはなし会でも人気の絵本です。(由)
●大川悦生 文 赤羽末吉 絵●ポプラ社(1968年11月)●26.4×21cm/33頁●定価1,800円(税込1,980円)※対象年齢:幼児から
昔むかし、九つの尾を持つ狐がいた。インドと中国を滅ぼし日本でも絶世の美女に化け朝廷を脅かすが、ついに那須で討たれて毒を吐く巨石になり……。国をまたぐ壮大さと千変万化ぶりに圧倒されました。さてこの殺生石、4年前に能の演出そのままに真っ二つ。今、世間を騒がす災には、石から出てきた狐の仕業もあったりして……と、令和の親子も伝説の続きを想像して楽しんでいます。(法)
●オトフリート・プロイスラー 作 フランツ・ヨーゼフ・トリップ 画 中村浩三 訳●偕成社(初版:1966年6月/改訂2版:2010年9月)●21.7×15.6cm/184頁●定価1,200円(税込1,320円)※対象年齢:小学校中学年から
ある日、おばあさんの大切なコーヒー挽きがホッツェンプロッツに強奪され、孫のカスパールと友だちのゼッペルは、知恵を絞り、取り返そうとしますが、逆に捕まってしまい……。窮地に陥った後の展開がハラハラドキドキの連続で、ページをめくる手が止まりませんでした。おもしろくて一気に読んでしまう本こそ、本好きへの扉を開いてくれると思います。心からオススメしたい一冊です。(楽)
●アストリッド・リンドグレーン 著 石井登志子 訳●岩波書店(2015年8月)●18.8×13.5cm/38頁●定価1,200円(税込1,320円)※対象年齢:小学校高学年から
「物事を解決するには暴力以外の別の方法があることを、わたくしたちはまずは自分の家庭で、お手本として示さなくてはならないのです」——1978年、ドイツ書店協会平和賞におけるリンドグレーンのスピーチの一節です。スピーチ終盤で語られる〈台所の棚の上の石〉にまつわるエピソードは、あまりに衝撃的で自身の価値観が一変しました。世代を超え受け継ぎたい名著です。(楽)
●社会応援ネットワーク 著 岩下宣子 監修●太田出版(2024年6月)●25.7×18.3cm/95頁●定価1,500円(税込1,650円)※対象年齢:中学生から
中高生の声を元に33の質問を取り上げ、見開きで1テーマが解説されています。「かたち」を覚えるのではなく、相手を思いやることがマナーの基本とのこと。友だちづきあいやSNSでの情報発信、冠婚葬祭や国際マナーにも触れられています。高校生になると、アルバイトや留学など親と離れて行動する機会も増えます。自分の身を守るためにも、中学生頃から親子で学ぶのにぴったりな内容です。(由)
●佐藤蕗 著●偕成社(2020年12月)●24×18.3cm/95頁●定価1,800円(税込1,980円)※対象年齢:小学校低学年から
身近な材料で、驚きと笑顔を生み出すおもちゃのアイデアがいっぱい! 空き箱で作る、くす玉ならぬ「くすばこ」、空カップに顔を貼るだけ、お風呂のお供「アワアワ〜」、光と影で模様が変わる「きせかえチョウチョ」など、どれも簡単に作れて夢中で遊べるものばかり。ふきさんのおもちゃは、遊びの中にひらめきや学びがひそんでいます。作って、遊んで、思いっきり楽しめる一冊です。(C)
●愛甲恵子 文 網代幸介 絵●BL出版(2025年2月)●29.1×22cm/33頁●定価1,800円(税込1,980円)※対象年齢:小学校低学年から
ある日、お調子者のアフマドは斧に「やり一本で300もの敵をたおす勇士アフマド」と彫ってもらいます。「300もの敵」とは、実はハエのこと。ところが、この言葉がきっかけでアフマドは「本物の勇士」に祭り上げられ、ついには戦場へ。アフマドの運命やいかに…・・・。イランらしい大らかでユーモアあふれる昔ばなし。タペストリーのような不思議で美しいイラストも魅力的です。(C)
●ふしみみさを 文 ポール・コックス 絵●BL出版(2021年2月)●29.1×21.8cm/31頁●定価1,800円(税込1,980円)※対象年齢:小学校低学年から
フランスとスペインをまたぐバスク地方に伝わる民話を基にした絵本です。バスクは国ではなく、住民たちは独自の珍しい文化や言語を持って暮らしているのだそう。かつては名の知れた船乗りだった船長が、毎朝の散歩でヘビに声をかけるところから物語が始まります。あえて7色に限定して描いたというユーモラスな絵も魅力的。時を超え、国を超えて、バスクの風に吹かれてみては。(理)
●稲垣栄洋 著●草思社(2021年12月)●15.2×10.5cm/248頁●定価750円(税込825円)
雑草生態学者の著者のユニークな文章で、昆虫から哺乳類まで、生き物の死にざまを書いています。次の世代に命をつなぐために命をかける生き物たち。その死にざまから生き方が浮かび上がり、命は循環することに思い至ります。ブロイラーや実験室のネズミなど、私たちの生活は他の命の犠牲の上に成り立っているということにも気づかされます。<本選びの会>メンバー高評価の一冊です。(洋)
●江口絵理 文 かわさきしゅんいち 絵 藤原義弘 監修●童心社(2024年9月)●25.1×25.6cm/40頁●定価1,800円(税込1,980円)※対象年齢:幼児から
地球で最大の哺乳類、クジラ。計算では今この瞬間、世界の海底になんと10万頭が沈んでいるのだそう。その身体をめぐり深海のさまざまな生物が集まって、肉や骨、発生する硫化水素を利用しながら生き永らえている。一頭のクジラの亡骸が別の命の源や住処になったりしながら、消えていくまでの時間は約100年。地上では知り得ない、命の連鎖のスケール感と深海の神秘が興味深い。(瑞)
●山岡淳一郎 著●地平社(2025年5月)●18.8×12.7cm/215頁●定価1,800円(税込1,980円)
医薬品大量消費国日本。概して薬への抵抗感が薄い日本人は薬を受け入れやすい。結果、安易な投薬とあふれる市販薬は何をもたらしたか。本書では当事者への取材を軸に検証。見えてきたのは「政治とビジネス」だ。ADHDやうつなどは本人主体ではなく、トラブルを回避したいケア側の意図が優先だ。製薬会社、医師や行政が連携した巧妙なキャンペーン、さらに海外からの圧力も複雑に絡む。そして当事者たちの壮絶な体験談からわかるのは、いとも簡単に「精神の病」は作られるが、薬からの離脱は極めて困難という現実だ。生きづらい社会は変えられるか?(よ)
●李美淑+小島慶子+治部れんげ+白河桃子+田中東子+浜田敬子+林香里+山本恵子 著●亜紀書房(2023年2月)●18.8×13cm/276頁●定価1,700円(税込1,870円)
インターネットやSNS、スマホの普及からたかだか20〜30年。現在はまだデジタル人類史の旧石器時代だ。この本では、ジャーナリスト、研究者、エッセイストらが、母親として、また社会的な立場から、ジェンダーの視点を絡め今のネット空間を解説しています。エコーチェンバー、フィルターバブル、アテンションエコノミーなど、ネット空間にはもともと人を孤立させ、分断してしまう仕組みがあります。どうすれば人を傷つけず、自分も搾取されず、差別をしないようにできるのか。ネットの特徴を理解して付き合い方を知ることができます。(洋)
●白井俊 著●中央公論新社(2025年2月)●17.3×11.1cm/213頁●定価900円(税込990円)
かつてPISA 世界一だったフィンランド、人材育成教育で注目されるシンガポール、デジタル化の進んだエストニアなど他国の教育事情がよくわかる。昨今ではSDGs、ウェルビーイングの概念を取り入れ、学ぶことの意義や楽しさを感じられる教育が目指されている。教育における主体性とは、教師の働きかけを前提に、学問のおもしろさや意義を自分ごととして理解していくことだ。そこでは、知識・スキル・態度および価値観を集結して、複雑な要求を満たす能力が求められる。OECDが示すこれからの教育の4つのシナリオについても考察している。(晴)
●原武史 著●岩波書店(2024年10月)●17.4×10.8cm/248頁●定価960円(税込1,056円)
1949年〜1953年に宮内庁長官を務めた田島道治がまとめた「拝謁記」を読み解き、昭和天皇の天皇観、政治思想、歴史観、宗教観、社会情勢観などを考察する。皇太子を「東宮ちゃん」と呼び、キリスト教への親近感、母親や兄弟との確執などを語る肉声からはリアルな人間像を感じる。そして共産主義への嫌悪と恐れから、軍備を保持し、沖縄への米軍駐留を望んだ、という。晩年の飄々とした「象徴」としての姿とは違い、戦後も君主意識が抜けず、政治に意思を持つ「象徴」と自らを考えていたことがわかる。現在の政治状況を考えるためにも必読の書。(戸)
●笠間直穂子 著●河出書房新社(2024年11月)●19.1×13.3cm/221頁●定価2,000円(税込2,200円)
東京の集合住宅から秩父の一戸建てに移り住んだ著者。そこでの暮らしを通して、土地の歴史、豊かな自然、人々との関わりを描きながら、その思考は文学のこと、先人たちのこと、社会問題へと柔軟に広がっていきます。端正な文章から伝わってくるのは深い知識と問題意識であり、社会の多様性や価値観への気づき、ひいては自分自身を見つめ直すことへとつながっていきます。武甲山に抱かれた町から届けられる名文の数々からは、人生と真摯に向き合う姿が伝わってきました。(桂)
●後藤正文+藤原辰史 著●ミシマ社(2024年12月)●18.8×13cm/223頁●定価1,800円(税込1,980円)
偶然、同年同日に生まれた二人がその日の新聞を読むことから対話が始まります。映画鑑賞や上勝町のフィールドワークを共にし、歴史、公害、原発、環境など過去から明らかになる現代社会の課題を探りますが、二人の問いに答えはありません。その時代の学びと「此処」という現代への抗いの過程を表現する「青」。歴史学者とロックミュージシャンが奏でる不思議なグルーヴから、青い星「を」どうしようかではなく、この青い星「で」どうしようかと考えるきっかけが生まれました。(麻)
●深緑野分 著●筑摩書房(2022年3月)●14.8×10.5cm/537頁●定価900円(税込990円)
1945年7月、ドイツ敗戦後に米ソ英仏の4か国統治下におかれたベルリン。アメリカ占領区の食堂で働く少女アウグステは、ある日突然ソ連軍に尋問される。彼女にはある人物への毒殺容疑がかかっていた。陽気で憎めない泥棒を相棒に、人探しの旅に出るアウグステ。荒廃した街で必死に生きる人々との出会いを経ながら、彼女の過去が次第に明かされていく。最後に待ち受けていた驚きの真実。戦時下における正義とは何なのか?膨大な資料を基に描き切った歴史ミステリー。(真)
●小津夜景 著●新潮社(2023年11月)●15.2×10.8cm/254頁●定価630円(税込693円)
漢詩を読んだことはありますか? その昔、学校でわけもわからず読まされた苦い思い出。杜甫の「国破れて山河在り」は悲しい印象のみ。しかし楽しい漢詩の世界がこの本には詰まっています。俳人でありパリ在住の著者が、しきたりや知識にこだわらない自由な漢詩とのつきあい方を案内。白居易や夏目漱石などの数々の漢詩。詩は生活に根ざしていて、コロナ禍の静かな暮らしや過去の思い出の中に自然に入り込んでくる。あの杜甫が楽しく麺を茹でる漢詩にうれしくなりました。(真)
●誠文堂新光社 編●誠文堂新光社(2016年10月)●24.7×18.6cm/239頁●定価2,800円(税込3,080円)
ボリューム満点で異国情緒あふれる豆料理のレシピ本です。前菜にスープ、主食に主菜と、各国料理のシェフが多彩な豆料理を教えてくれます。現地レポートや写真もたっぷりで豆図鑑のよう。土地ごとの食文化の奥深さに魅了されました。わが家ではいんげん豆を使ったレバノンの煮込み料理に挑戦。手軽に作れた上に、スパイスが効いて家族にも喜ばれました!豆料理を通して世界の食卓をのぞくような楽しさがあります。(亜)
今週の注目品
その他の特集
ホッとひと息 冬のおやつ
寒い日には、おいしいおやつと飲みものを用意してホッとひと息つきませんか?
すくすくBaby&Kids おむつやミルクなども!
ミールキット「ビオサポ食材セット」で、気持ちにゆとりを持って新年の生活をスタートしませんか。あると便利な半調理品も一緒に紹介します。