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●安部智穂 著●婦人之友社(2023年9月)●21cm×14.9cm/143頁●定価1,700円(税込1,870円)
岩手県早池峰(ルビ・はやちね)山麓にあるタイマグラ集落に30年前に移住した著者は、「毎年いただく森の恵みや畑の作物をどうすればおいしくいただけるか、手を動かしながら考えてきた」という。紹介されているのは、みずから育て採取した食材を使った四季折々の保存食や創作レシピ。桜の塩漬け、オニグルミの割り方、東北地方の「しそ巻き」など、ずっと知りたかったレシピも掲載されていて感激です。(万)
●高野紀子 文・絵●偕成社(2023年4月)●24.6cm×22.4cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:小学校低学年から
夏が近づくと飲みたくなる梅シロップ。この絵本では、梅の木に実がなるところから、シロップが完成するまでの様子をかわいいイラストで丁寧に描いています。瓶に詰めた梅の変化も説明されているので、できあがるまでの数日間をより楽しく過ごせます。瓶の消毒方法や失敗を防ぐコツ、梅シロップを利用したレシピなど、情報も盛りだくさん。親子で絵本を読んで梅しごとをお楽しみください。(春)
●金田初代 著●エクスナレッジ(2021年3月)●21cm×14.8cm/159頁●定価1,600円(税込1,760円)
ハルジオンとヒメジョオンの違いをご存じですか? 散歩で見かける野草を季節ごとに美しいイラストつきで紹介。見分けるポイントは特に役に立ちます。ここまで野草の種類が多く、細かく書かれたものは見たことがありません。レンゲソウで遊んでみたり、食べてみたり。カラスウリの花はレースのよう。秋にはススキでミミズクを作ってみたい。家族でこの本を持って道草したいですね。(み)
●酒徒 著●マガジンハウス(2023年10月)●21cm×15cm/128頁●定価1,500円(税込1,650円)
題名通り「あたらしい」中華の本。特別な材料も調味料もいらず、作り方もシンプルなふだんのおかず。炒め油に塩か醤油くらいなのに、お酒やご飯にぴったりの中華味になる不思議。それは著者が中国各地で習った一般家庭のお料理だから。優しい味つけは滋味深く、いろいろな野菜料理が載っています。巻末の索引は持て余した食材がある時にも役に立ちそう。本選びの会でも評判の一冊です。(空)
●有元葉子 著●東京書籍(2022年8月)●25.7cm×18.3cm/111頁●定価1,600円(税込1,760円)
「台所仕事をしていると酢は本当にえらい、縁の下の力持ちだと実感します」と著者。台所に必ずある酢は料理の味わいに奥深さを与え、健康にも役立つ!「煮る・炒める・しめる」といった調理方法別レシピで酢の使い方を伝授。巻末では肉、魚介、野菜別にレシピ名が表記されているので献立に困った時は参考に。簡単おすしはハレの日にも大活躍。早速試したくなるレシピが必ずここに。(薫)
●上田淳子 著●オレンジページ(2023年2月)●21cm×14.9cm/145頁●定価1,500円(税込1,650円)
子どもが自立して、再び夫婦二人暮らし……どうしよう! と思っていた時この本に出会いました。人気料理研究家の著者が、「夫(妻)相棒化計画」を掲げ、お互いが無理せず心地よい生活スタイルを作っていく様子が描かれ、夫婦の距離の取り方など参考になります。途中に挟まれる夫の本音や成人した息子たちへの一問一答もおもしろく、後半には夫婦で楽しむレシピも。お得感のある一冊です。(a)
●口尾麻美 著●家の光協会(2023年1月)●21cm×15cm/143頁●定価1,800円(税込1,980円)
料理研究家でフォトエッセイストでもある著者が、14カ国を旅して集めた台所道具とそれを使った郷土料理を紹介する。膨大なコレクションの中からの選りすぐりの逸品、その色合いの美しさや不思議なフォルムに魅了される。梅干しの甕に似たロシアのスープの壺やジョージアのしずくの形の酒器からは、その国の食文化や気質が伝わってくる。著者のように、私も道具を探しに旅に出たくなった。(万)
●鈴木宣弘 著●講談社(2022年11月)●17.3cm×11.6cm/184頁●定価900円(税込990円)
「生活と自治」でもおなじみの著者。異常気象、原油高騰、ウクライナ侵攻で穀物欠乏と頭を悩ませる事象が目白押しのなかで「食の安全保障をどう守るか」が説かれています。核戦争を想定しなくとも、世界的な不作、国同士の対立による輸出停止・規制が広がれば日本人が最も飢餓に陥りやすい。問題の深刻さに頭が痛くなりますが、「給食で有機作物を」といった打開策に一筋の光を感じます。(薫)
●伊藤絵美 著●晶文社(2023年7月)●18.6cm×12.8cm/254頁●定価1,600円(税込1,760円)
臨床心理士の伊藤絵美さんがカウンセリングの場で語るように綴られたエッセイ。様々な心理療法から、自身の依存症や母との関係による心の問題をどう乗り越えてきたかまで、実体験を基にわかりやすく伝えてくれます。自動思考の外在化、ネガティブ思考を反すうしないためのマインドフルネスなど、日常に生かせるセルフケアが具体的に紹介されていて力強い味方になってくれる一冊。(夜)
●本間真二郎 著●講談社(2023年9月)●18.8cm×13.1cm/207頁●定価1,600円(税込1,760円)
著者は栃木県那須烏山市にある診療所に勤務し、自給自足の生活をする自然派の医師。本書では、微生物や腸内細菌の重要性を説くとともに、手作りの発酵食品や、日々の食事のレシピも紹介しています。できる限り人まかせにしない自然に沿った暮らしを基本とし、必要なものは柔軟に取り入れる。デジタル化社会とのつきあい方にも触れています。これからの暮らしの指針としたい本です。(玲)
●主婦の友社 編●主婦の友社(2023年7月)●25.7cm×18.4cm/97頁●定価1,300円(税込1,430円)
50〜60代のひとり暮らしの女性の生活が紹介された本。家を借りる、買う、どちらの利点も難点も実例と共に書かれています。お金に特化した本はめずらしい。マンションのリノベーションでは具体的な費用が書かれていてリアル。物を減らしお気に入りのものだけに囲まれた日々はうらやましい。デジタル時代だからこそ紙に残すことは大切とも。そろそろエンディングノートを準備しようかな。(み)
●三遊亭兼好 著 安藤優一郎 歴史監修●アノニマ・スタジオ(2022年12月)●17.7cm×12.8cm/136頁●定価1,600円(税込1,760円)
古典落語の定番55作品を題材に、それぞれの噺のあらすじや言葉の解説とともに舞台となっている江戸の暮らしや文化を紹介する。「落語は難しい知識もいらずに江戸の世界へタイムスリップできる優れもの」という著者の言葉どおり、読み進むうちに江戸のまちや住まい、食事情やよそおい、娯楽や年中行事など江戸っ子の日常が生き生きと伝わってくる。落語初心者にぜひおすすめしたい一冊。(万)
●週末縄文人 縄・文 著●産業編集センター(2023年8月)●18cm×13cm/175頁●定価1,600円(税込1,760円)
何不自由なく大人になった若者二人。一人が「山で遊ばないか」ともう一人を誘い始まったゼロからの生活。これが縄文人の暮らしを再現することへと二人を向かわせる。スーツ姿で石を磨いて斧を作り、植物から紐を作り、竪穴式住居を建設。苦労の末の土器創生シーンでは読み手にも感動が走る。何かを生み出すことで生きることと向きあう二人のドキュメンタリーは多くの人を魅了し続けている。(な)
●ヨシタケシンスケ 著●光村図書出版(2022年12月)●20.1cm×15.6cm/143頁●定価1,600円(税込1,760円)
道端の粗大ゴミ、木の枝にひっかかったTシャツ……身近な何かを見た時にヨシタケシンスケの脳内にひろがる日々の臆測90話を集めた一冊。え? そんな風に思うの!? 作者ならではの驚きの発想から、しみじみとうなずける納得の臆測まで、笑ったり考えさせられたり。本選びの会でも心に響く臆測は人それぞれ。おなじみの絶妙なイラストとともにお気に入りの臆測を見つけてください。(実)
●藤岡みなみ 著●左右社(2022年8月)●18.8cm×13cm/222頁●定価1,800円(税込1,980円)
インパクトのあるタイトルと、つい吹き出してしまうおもしろいエピソード。著者持ち前の「ころがる好奇心」で綴られたエッセイです。「人がふたりいれば、それはもう異文化交流」と、中国人の夫や義母との関わりだけでなく、そこここにある思い込みや差別をずば抜けた感性と柔軟性で受けとめ、明らかにしていくさまは痛快! 国籍、文化背景、障害など、多様性について考えさせられます。(a)
●佐藤義竹 著●小学館(2023年11月)●21cm×14.9cm/95頁●定価1,300円(税込1,430円)
発達障害の子だけではなく苦手な事のある誰もが助けられる便利な道具が満載。老眼のある私は目が疲れやすく光が反射しないノートがとても快適。こんなにも楽に作業できるとは嬉しい驚き。手先が不器用、気が散って作業に集中できない、学びを妨げる部分を道具で補えば本来の集中力を発揮でき伸びていける子は多くいます。大人たちが知恵を出しあい作る道具の数々には感動すら覚えます。(友)
●MAYA MAXX 絵と文●福音館書店(2023年1月)●20cm×19.1cm/20頁●定価900円(税込990円) ※対象年齢:赤ちゃんから
福音館書店「0.1.2.えほん」シリーズの1冊。幸せそうなぱんだちゃんが、大好きな竹の葉っぱを食べて、遊んで、うんちして、また食べて、ねむくなったらママとおやすみというお話が、親子にゆったり、のんびりとした時間を作り出してくれます。ぱんだちゃんの愛嬌あふれる目線や独特のポーズには、思わず顔がほころびニッコリ。安心してめくれる角丸・厚紙仕様は、ひとり絵本のデビューとしても良さそう。(B)
●ジェフ・ブラウン 文 トミー・ウンゲラー 絵 さくまゆみこ 訳●あすなろ書房(1998年12月)●20.3cm×15.6cm/79頁●定価950円(税込1,045円) ※対象年齢:小学校低学年から
ある朝スタンレーが目を覚ますと、体がぺちゃんこにつぶれていました。封筒に入って旅をしたり、凧になって空を飛んだり、泥棒を捕まえたりと大活躍します。荒唐無稽なエピソードの数々にウンゲラーの挿絵がばっちりハマり、ユーモア爆発。スタンレーに嫉妬する弟アーサーの存在も物語に深みを与えます。ぺちゃんこの体はどうなってしまうのか、ですって? それは読んでからのお楽しみ!(法)
●クリストファー・ウィラード + オリビア・ワイザー 作 アリソン・オリバー 絵 茂木健一郎 訳●大泉書店(2022年2月)●22.1cm×22.3cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:幼児から大人
絵本を通じて「呼吸に意識を向け、心と体の調子を整える」体験ができる一冊。文章を読みながら書かれている通りに実践していくユニークな試みがおもしろい。たとえば目を閉じて指先で本の表紙の感触を確かめたり、寝そべってお腹の上に本を乗せ重さを感じてみたり。ヨガやストレッチとはまた違った深い呼吸とリラックスが得られる。ベッドに持ち込んで子どもと一緒に楽しめそう。(理)
●小池昌代 編 スズキコージ 画●あかね書房(2007年9月)●24.6cm×20.5cm/40頁●定価1,800円(税込1,980円) ※対象年齢:小学校低学年から
著名な詩人たちの詩を集めた絵本。言葉ってなんだかおもしろいと思える詩が18篇収録されています。自分で読んでも読んでもらっても、楽しい詩は子どもの心に響くのでしょう。本選びの会でも「子どもがすぐに覚えて口ずさんでいた」と好評でした。スズキコージのエキセントリックなイラストは詩の世界にぴったり。小池昌代のくすっと笑える解説は、詩への味わいを深めてくれます。(C)
●佐藤さとる 文 村上勉 絵●偕成社(1971年1月)●25.5cm×21cm/32頁●定価1,000円(税込1,100円) ※対象年齢:小学校低学年から
おおきくて、たかい木にのぼってみたい。うろのはしごが小屋につながっている。小屋ではホットケーキを焼く。てっぺんには見晴らし台があって遠くの山まで見渡せる……かおるくんの空想はどこまでも膨らんでいきます。縦の見開きを生かした村上勉さんの絵が、どっしりした根もとから鳥が戯れる木の頂まで、まるで読者も登っているかのように感じさせてくれます。色褪せない名作絵本です。(法)
●ジュリエット・ケペシュ 文・絵 いしいももこ 訳●福音館書店(1964年7月)●15.5cm×23.4cm/32頁●定価1,000円(税込1,100円) ※対象年齢:幼児から
かえるの生態や躍動的な描写で愛され続けている、なんと出版から60年というロングセラー絵本です。水の中のゼリーのようなかえるのたまごが大きな魚に食べられてしまうのですが、なんとか命びろいした4匹のかえるたちが水の中で楽しく遊んだり、天敵をうまくかわしたりとひと夏を謳歌している様子がとても楽しく頼もしいお話です。色褪せず読み継いでいけるこの一冊をぜひお家に。(裕)
●うえだまこと 作●BL出版(2022年7月)●21.9cm×26cm/32頁●定価1,600円(税込1,760円) ※対象年齢:幼児から
仲良しのりすとかえるは旅に出る約束をしていました。ところが、その日はあいにくの雨。りすががっかりしていると、かえるがやって来て言いました。「雨の日ってすてきだね。こんないい日に旅に行けるなんて!すばらしいと思わない?」ぽたん、ぽてん、ぽつん。雨の中ふたりは川に舟を浮かべて出発するのでした。いつもとはほんのちょっと違う、かけがえのないひとときの物語です。(C)
●角野栄子 文 ユリア・ヴォリ 絵●ブロンズ新社(2007年8月)●23.5cm×23.5cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円)対象年齢幼児から
森のそばの古い洋館「イエコさん」、長年暮らした住人が去り、空家になってしまいます。でも「ひとりぼっちでも たのしくくらすわ」と手足を伸ばしてエクササイズ! そんなイエコさんのもとに森の動物たちがやってきます……が、そこから先は予想を裏切るホラーな展開に! 動物たちの運命は!? おしゃれなイエコさんの本心はいずこに!? 角野栄子のいたずら心いっぱいの絵本です。(実)
●ザ・キャビンカンパニー 作・絵●あかね書房(2022年6月)●25.8cm×26.5cm/34頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:小学校低学年から
7時47分、僕は玄関を飛び出て走り出しました。急げ急げ、急がないと「がっこうにまにあわない」。タイトルが見開きでどーんと出るところが、映画の始まりのようでワクワクしてきます。1分ずつ時間が経つにつれ、ハラハラドキドキ、緊張感が高まる手に汗握る展開。迫力ある絵の力で本の世界に引き込まれ、読後は子どもも大人もみんな一緒に、心地よい爽快感に満たされるはず。(七)
●齋藤陽道 著 盛山麻奈美 協力●ナナロク社(2022年5月)●25.7cm×18.7cm/196頁●定価1,800円(税込1,980円)
ろう者である写真家の著者と妻、聞こえる二人の子どもたちとの生活を綴った育児まんが。ことばや思いは口と耳だけで交わし合うものではなく、目、手、体全体でここまで深く分かち合えるのだと気づかされました。まんがだからこその躍動感とおもしろさがあり、不自由さよりむしろ手話の世界の豊かさを知りました。小さな人との暮らしの喜びに満ちた、出会えてよかったと心から思う育児本です。(亜)
●暮しの手帖社 編●暮しの手帖社(2024年5月)●28cm×21cm/184頁●定価1,000円(税込1,100円)
暑さ厳しい京都に暮らす料理家の大原千鶴さんが「柔らか豚しゃぶとみょうがの白和え」「トマトすき焼き」など 知っておくと重宝する夏の料理7品をおしえてくれます。この季節に知っておきたい「衣替えいらず」の洋服収納術、家の窓の掃除方法や断熱性能を上げるリノベーションについても紹介。1970年に本誌に掲載され読者に愛され続けてきた「らっきょう漬け」レシピも必見です。(芙)
●岡真理 著●大和書房(2023年12月)●18.8cm×13.1cm/204頁●定価1,400円(税込1,540円)
アラブ文学者でガザを知る筆者は、きっぱりとパレスチナ側に立つ。今の状態は、攻撃の「応酬」、憎しみの「連鎖」などではなく、イスラエルによる国連法を無視したジェノサイドであるという。戦勝国の植民地主義、欧米の民族差別意識の上にイスラエルが建国された経緯が語られる。また、封鎖され生きながら死を待つしかないガザの現状、イスラエルの国連法無視の殺戮兵器が、日本での報道以上の凄惨さであることを、詳細に記述する。一方的な見方では、と思う方も、ぜひ読んでみて下さい。今現在、ガザの国連施設も病院も攻撃されている。(戸)
●中島岳志+雨宮処凛+杉田俊介+斎藤環+平野啓一郎 著●かもがわ出版(2023年9月)●19cm×13.2cm/217頁●定価1,900円(税込2,090円)
2008 年の秋葉原無差別殺傷事件を契機に安倍元首相銃撃事件、岸田首相襲撃事件といった過激化の一途をたどる「国内テロ」が起きた社会構造の変遷を分析する。「失われた30年」の中、増え続けた不安定層の存在に真正面から向き合おうとする著者陣。事件を起こした加藤智大が抱えていた心の闇を明らかにしようとすると同時に精神分析的な考察、死刑制度を問うといった多方面からの対談や鼎談が重ねられる。「複雑怪奇な自己責任社会」の中で生きづらさが増す今日、「秋葉原事件をテロリズム時代の幕開けにしないために」私たちにできることとは。(薫)
●斎藤幸平+松本卓也+白井聡+松村圭一郎+岸本聡子+木村あや+藤原辰史 著●集英社(2023年8月)●18.8cm×13.3cm/287頁●定価1,700円(税込1,870円)
今世界は異常気象、戦争、食料や水不足と複合危機に覆われている。資本主義の下での人類の経済活動が主な原因。それを後押しする強権的国家も現れ、民主主義の危機も引き起こしている。斎藤幸平氏は解決のカギとして、人の生存に必要な水やエネルギーや食料などを「コモン(共有財)」として再生し、かつ民主的、平等に運営する市民の自治力が不可欠という。7人の執筆者は、大学、商店、地方政治、市民科学、精神医療、農や食の現場から、自治の例と将来への希望を述べる。身近なヒントが多く、あなたが自治の一歩を踏み出すために役立つ本。(か)
●藤田早苗 著●集英社(2022年12月)●17.3cm×10.7cm/317頁●定価1,000円(税込1,100円)
本書は国内からではわかりづらい部分がある日本の貧困・報道・差別・入管等の人権問題を国際人権基準というグローバルな視点に照らしてその現状を詳らかにしていく。日本では人権教育と道徳教育が混同され、思いやりや優しさと誤解されていると指摘。また政府は国連からの再三の勧告をことごとく無視、耳を貸さない。見えてくるのは政府や社会の人権意識の低さと世界との格差だ。では今後どう取り組むべきか。まずは人権を理解するために啓蒙が必要であり「人権の視点」を持つ人材を育て行政や司法に増やすことが大切と説く。読んでおきたい一冊。(よ)
●ルータ・セペティス 作 野沢佳織 訳●岩波書店(2023年9月)●18.8cm×13cm/398頁●定価2,500円(税込2,750円)※対象年齢:中学生から大人
校長室に呼び出され密告者になるよう強要される。恋人とコカ・コーラを飲んでいたら咎(ルビ・とが)になる。同時代の日本でも信じがたいことだが、“普通の高校生”クリスティアンに起こった本当のことで……。チャウシェスク政権最末期の1989年、ルーマニアの首都ブカレストが舞台の歴史フィクション。家族愛や友愛が監視・密告に利用され人々が引き裂かれる恐ろしさ、個人が真実を見極めることの難しさを、17歳ならではのリアリティで追体験できます。綿密な取材が昇華された力作です。(法)
●若松英輔 著●講談社(2023年3月)●18.8cm×13cm/381頁●定価1,800円(税込1,980円)
東西の作家と作品を論じつつ、そこに自身の半生を重ね合わせている。批評家の著者ならではの自伝だと感じた。冒頭で著者は、開高健の言葉を紹介する。「人間五十になると誰でも自伝を書きたくなる」。まさに今五十代の著者は、リルケ、遠藤周作、井上洋治ほか多数の作品に触れながら、自身の軌跡に思いを馳せていく。何を成し遂げたかではなく、何を見出し得なかったかを辿る過去への旅だ。著者はボーン・クリスチャンであり、すべての働きかけを福音と捉えていることが伝わった。(き)
●有吉佐和子 著●河出書房新社(2023年1月)●14.9cm×10.5cm/285頁●定価900円(税込990円)
「ニューギニアはほんまにええとこやで」文化人類学者で友人の畑中さんに誘われて、軽いノリで訪れてしまった著者。3日間ジャングルを歩かされ、爪ははがれ、ついには倒れて、現地の人に棒で括られ運ばれる始末。過酷な環境でもたくましい貧乏学者の畑中さんと現地では何にも役に立たない著者は対照的。二人の会話に何度も笑いながらも、女ひとりで奮闘する畑中さんへの尊敬の念を覚えた。今は何でも調べられるネット時代、こんなびっくり仰天の冒険はもうできないかも。(真)
●ショーン・タン 著 岸本佐知子 訳●河出書房新社(2012年10月)●15.3cm×12.2cm/48頁●定価1,000円(税込1,100円)
交換留学生のエリックは控えめでちょっと風変わり。勉強も眠るのも台所の戸棚の中。僕が思い描いていたような交流はできなかったけれど、母さんは「お国柄ね」とすべてを受け入れた。エリックはホームステイを楽しんでくれたのだろうか。コミュニケーションとは、違いを受け入れることとは何なのでしょうか。「お国柄ね」の言葉と、エリックが戸棚の中に残した贈り物に心温められるお話です。(春)
●ク・ビョンモ 著 小山内園子 訳●岩波書店(2022年12月)●19.4cm×13.5cm/274頁●定価2,700円(税込2,970円)
伝説の女殺し屋・爪角(ルビ・チョガク)は65歳となり、肉体の衰えを感じている。しかも致命的ミスの際に助けてくれた36歳の医師へ恋に近い感情すら持ってしまう。身体も心もいうことを聞かなくなる爪角に敵意をむき出しにする若い殺し屋トゥ……。ターゲットを仕留める描写やアクションシーンは静かな迫力に満ちて映画のよう。主人公の生い立ちには戦争が影を落とし、若い頃の苛烈な日々と老いに向き合う現在の両方の内面が豊かに描かれている。単純なノワール小説とは一線を画す作品。(夜)
●ヒロミ・ゴトー 作 アン・ズー 画 ニキリンコ 訳●生活書院(2023年1月)●21cm×15cm/368頁●定価2,500円(税込2,750円)
自立心旺盛な高齢日系カナダ人、クミコの物語を描くグラフィックノベル。娘らが用意したケアハウスを抜け出しひとり暮らしを始めた76歳の彼女に忍び寄る死の影。立ち向かう彼女を支えるのは新しく出会う人々や元カノ、そして掃除機と浄めのバスソルト! 娘への肝臓移植や夫との死別を乗り越え進む彼女の生き方から、高齢者という言葉でひと括りにはさせないぞと勇気が湧いてきます。(L)
●マヤ・セーヴストロム 著 井上舞 訳●化学同人(2020年12月)●19.6cm×16.1cm/109頁●定価1,500円(税込1,650円)
50を超える動物親子の生態をイラストとともにご紹介。モノクロの中に温かみとおかしみを溶かし込んだ絵柄は見ていて飽きません。頁をめくる度にクスッとしたり驚いたり。赤ちゃん象の誕生を仲間みんなでお祝いするなんて初耳です。初めて知る動物にも親近感を覚えて動物園に会いに行きたくなりました。子育てひとつとっても、動物の世界の素晴らしい多様性から学べることは多そうです。(空)
●たつくりのおりがみ 著●ブティック社(2023年4月)●26cm×21cm/96頁●定価1,300円(税込1,430円)※対象年齢:小学校中学年から大人
今の子どもたちが喜ぶ折り紙本です。大人の折り紙本はダサイと目もくれませんでしたが本書はカワイイとのこと。小学生も中学年ならひとりで折れます。中学生と高校生も「久しぶりに折ると楽しい」「できると達成感がある」と喜んで動物たちが机いっぱいにできあがりました。折り図はわかりやすく、簡単な物から二枚を組む凝った物まで。ポチ袋、しおり、箸袋に動物がいると場がなごみますね。(友)
●パク・ソンフン 著●SBクリエイティブ(2023年2月)●21cm×15cm/143頁●定価1,400円(税込1,540円)
肩凝りは胸と背中を伸ばす、膝痛は足首をもむ……この本には単に患部をほぐすのではなく、痛みの出ている骨格につながる「筋肉」(原因)に着目したストレッチや筋トレが紹介されています。眼精疲労、天気痛などの体の不調から、しわ、たるみなど美容の悩みまで、試してみたいものがたくさん。いつまでも若々しくあるための姿勢や食事のアドバイスも。自分の不調は自分の手で治しましょう!(a)