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●宮川健郎 編●汐文社(2025年3月)●各19.5×13.5cm/202〜214頁●定価5,400円(税込5,940円) ※対象年齢:小学校高学年から
名作ぞろいの中、一番胸を締め付けられたのは、幼子が「なんにも知らないまに」亡くした親の帰りを無邪気に待つ話です。戦争とは、望まざる形に歪んだ日常を生涯にわたり強制されることだと自分に引き寄せ理解しました。一流の書き手が遺した物語は、想像力で未知を補い、より良い未来を選ぶ力をくれます。為政者があたかも最適解のように語る戦争像と、さてフィクションはどちらでしょう。(法)
●有元葉子 著●暮しの手帖社(2025年10月)●25.7×18.2cm/141頁●定価1,900円(税込2,090円)
有元さんは、自分がおいしいと思うものを選ぶことが大切と言います。掲載された料理はシンプルですぐにまねしたいものばかり。健康のために主食は白米をやめて玄米に……ではなく、どちらも楽しむ。メープルシロップがたっぷりの玉子焼きは白米に、オリーブ油でカリカリに焼いた目玉焼は玄米に合うと。こんなやわらかな発想が「おいしく食べて、からだにいい」につながるのですね。(深)
●ヤミー+石井りか 著●KADOKAWA(2025年7月)●25×18.3cm/119頁●定価1,600円(税込1,760円)
スパイスは漢方の生薬!世界を旅する料理研究家と薬膳のプロがコラボし、二十四節気、季節ごとの不調に備える養生カレーを提案。身近な材料をミキサーでペースト状にしてさっと作れるものから、数種のスパイスで煮込むものまで、バリエーションは実に豊か。くるみやごまなど異色な取り合わせも。副菜や飲み物、チャパティのレシピや食材の効能解説もあり、満足度の高い一冊です。(a)
●yuka*cm 著●主婦の友社(2025年7月)●25.7×18.4cm/95頁●定価1,700円(税込1,870円)
表紙は黒糖ゼリーとごまのチュイールをあわせた「ほうじ茶のパンナコッタ」。暑い日のお三時をすてきに演出してくれます。ほかにも「作りたい!」「食べたい!」があふれるゼリーやムース、アジアンスイーツ、和の冷菓子が勢ぞろい。この夏「梅酒のクラッシュゼリーソーダ」を友人たちにふるまいたい。少し手間のかかる葛ねり、水まんじゅうにもトライしようと、夏のおうち時間が楽しみです。(な)
●今井晋二 監修 NHK出版 編●NHK出版(2024年12月)●25.7×18.3cm/95頁●定価1,100円(税込1,210円)
肩のこり、肩の痛みは「そのうち治る」と思っていませんか? まさしく私の場合がそうでした。肩こりではなく腱板が裂けていたのです。本書は、症状を「いますぐチェック」から始まり、イラストで症例をわかりやすく紹介。改善すべき生活習慣も、立つ・歩くとき、座っているとき、荷物を持つ・取るとき、冷え対策、睡眠の工夫のポイントにわけて、しっかりと説明。役立つ一冊です。(深)
●川手鮎子 著●自由国民社(2021年9月)●18.9×15cm/399頁●定価1,800円(税込1,980円)
冬至から始まる365日の漢方の本。難しいことはなく、ジャスミンなどの香りのお茶でリラックスしたり、クルミで老化防止をはかったりと誰でもできることばかり。私はクコの実をちょい足しで目の疲れを緩和。全編カラーでやさしいイラストに心が和みます。手元においてちょっとした不調時にページをめくり心癒やされています。私にとって大切なお守りのような、なくてはならない本。(み)
●山田正彦 著●KADOKAWA(2025年7月)●17.3×11cm/270頁●定価980円(税込1,078円)
元農林水産大臣で弁護士の著者による渾身のレポート。「無添加」「遺伝子組み換えでない」表示が消えたのは誰の思惑か。令和の米騒動はなぜ起きたのか。利潤追求の陰に追いやられ、安全な食材を普通に手に入れることが難しくなっているわが国の現状を伝える。現状が子世代にどう影響するか真剣に考え、生産者を守るために食べ支えることの意義を再認識した。全消費者必読の本です。(な)
●森田真生 著 西淑 絵●福音館書店(2025年4月)●19.2×13.6cm/213頁●定価1,800円(税込1,980円)
自然を前にして発する子どもたちの言葉と驚きの場面。研究者の著者が「数」を通して、それを丁寧にすくい取り、成長を思う。「人間は不確実な未来を絶えず予測し、予測と現実の誤差に学びながら、世界像を更新していく」。現実の変化が避けられないときは「あと十日」「二秒で終わる」と「かぞえる」ことが、子どもが未来に備える手助けになると。子どもに関わるすべての人に届けたい。(深)
●増田由紀 著●アスコム(2025年1月)●21×14.9cm/125頁●定価1,250円(税込1,375円)
いくつものパスワードを設定する必要がある今、この記録ノートは有能な秘書のように役立ちます。大事なのはすべてを整理して一元管理すること。それには「重要なコツ」があります。スマホのオーナーである自分が、パスワードを社長級〜社員級にランク分けして記入すること。その作業も楽しく、不要なアカウントの整理もできました。60代以下の世代にもぜひ使ってほしい。プレゼントにも最適。(な)
●塚田紀子 著●文化出版局(2024年11月)●25.7×19cm/79頁●定価1,600円(税込1,760円)
「ベストなら」?たしかに衿も袖付けもないし、型紙も単純で直線縫い。身体に沿わない形だから縫い目が少々乱れてもこわくない。実は初心者さんにうってつけかも?とページを繰りながら思いました。しゃれたデザインやいろいろな素材、切りっぱなしやリメイクなどすぐに作れるアイディアも楽しい。お気に入りの生地で作って羽織れば愛着もひとしお。あれこれ作る楽しみが広がりました。(空)
●杉原梨江子 文 板垣夏樹 絵●エクスナレッジ(2025年12月)●20×15cm/207頁●定価2,200円(税込2,420円)
身近な花々が、時代や国を超えて受け継いできた物語やメッセージが詰まった一冊。花ごとの世界観を色鮮やかに描いた絵に魅了されます。ポインセチアはなぜクリスマスの花になったのか、アジサイにまつわる長崎を舞台にした恋の行方は……。秘められたお話を知ると花が一層愛おしくなります。手元において季節ごとに読み返したい。大切な人への贈り物にもおすすめです。(a)
●昭文社 編●昭文社(2024年3月)●25.7×9.8cm/地図32頁 国内交通利用ガイド64頁●定価1,200円(税込1,320円)※記載の情報は2023年12月現在のものです。
全国のJR・私鉄・地下鉄・路面電車の全線全駅を収録した一枚の長い蛇腹状地図。スマホの地図とは違い全体像をつかむのに最適! 路線図にワクワクし、駅名を見つめれば旅に出たくなる。付録の鉄道・バス・航空機・船舶利用ガイドには運賃の計算方法や予約から利用までの情報を記載。楽しくお得な旅の計画時も旅行中も強い味方に。都道府県名を学び始めた9歳の娘も興味津々です。(薫)
●佐野貴司 著●河出書房新社(2025年8月)●18.8×12.8cm/192頁●定価1,540円(税込1,694円)
大陸と海底の違いを考えてみたことはありますか? 探検家に興味をもち、火山学者になった著者による熱量のこもった地球科学の入門書です。著者は地球の謎を解くために、これまでに20万km(地球5周分!)も移動し、海底にも潜ります。世界中を巡る調査の話は旅行記のよう。知らない言葉が出てきても、豊富な調査経験談やわかりやすい解説があるので、楽しく読み進められます。(春)
●茂木誠 監修 武楽清+サイドランチ マンガ●池田書店(初版:2016年12月/改訂版:2020年12月)●21×14.8cm/207頁●定価1,400円(税込1,540円)
地政学という言葉を新聞やテレビでもよく見かけませんか? 地政学の基本原理は「国家の行動原理は生き残り」「隣国同士は対立する」「敵の敵は味方」。大国の指導者が世界地図を見ながら考えていることを追体験できる学問なのです。アメリカから、中国から、ロシアから、もちろん日本からの地図も載っています。地政学を知ることでその国の行動基準や、争いの理由がわかります。(洋)
●かわじろう 著●マガジンハウス(2025年9月)●18.2×12.8cm/188頁●定価900円(税込990円)
前の学校の親友が大事だから、新しい学校では友だちはいらない!と宣言する転校生。そんな心を閉ざした彼女と強引に交流しようとする女の子。ちぐはぐなふたりの社会科見学はどうなる? ちょっとこじらせているけれど、精いっぱい生きている主人公たち。甘酸っぱい思春期モノから、狐と入れ替わるクリスマスなどシュールな短編も盛りだくさん。今後の作品も楽しみな新人漫画家です。(真)
●アンニ・スヴァン 作 ルドルフ・コイヴ 絵 古市真由美 訳●岩波書店(2023年10月)●17.2×12cm/266頁●定価810円(税込891円) ※対象年齢:小学校中学年から
フィンランドの自然や風土、人間の暮らしが生き生きと鮮やかに描かれた13篇の物語です。雪の大地や深い森とともに生きる人びと。そして動物やこびとや賢者、春の女神、北風、山や水の王の一族などの人ではない者たちも。その語りやささやきに耳を傾けているような、不思議に心地よい魅力に満ちています。100年前から親しまれてきた情感豊かなすばらしいお話の数々、親子でぜひどうぞ。(理)
●麻生知子 作●福音館書店(2025年5月)●26×25.1cm/40頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:小学校低学年から
こうたくんとおじいさんは、電車に乗って温泉旅行へ。電車やボートに乗り、豪華な晩ごはんとお風呂を楽しみます。切り絵で丁寧に描かれたイラストや真上からの視点で見る宿の様子やごちそうは、祖父と孫の旅行を覗き見しているような気分になります。宿の壁のポスターやお土産屋さんの商品も細かい描き込みが楽しくて、見るたびに新しい発見があります。温泉旅行気分を楽しみましょう。(春)
●ミリアム・ダーマン+ニコラ・ディガール 文 ジュリア・サルダ 絵 河野万里子 訳●徳間書店(2025年5月)●25.6×19.7cm/48頁●定価2,000円(税込2,200円) ※対象年齢:小学校中学年から
奇妙なうわさが流れる森で、青年オーレンが消息を絶った。オーレンに密かに心を寄せていた渡し守のレーナは、荒れ狂う川を越え森へと急ぐ。森の岸辺で彼女を待っていたのは、巨大なヒキガエルのクアクア卿だった……。ジュリア・サルダが描く緻密で美しくダークな世界観と、スリルある展開が魅力的な一冊。親子で夢中になって読みました。ファンタジーへの入り口としてもおすすめです。(楽)
●高久至 写真・文●アリス館(2021年4月)●28.5×23.5cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円) ※小学校低学年から
屋久島在住の高久至さんが、アカウミガメの産卵や子ガメたちの旅立ちの様子などを紹介した写真絵本です。カメたちの愛らしさ、屋久島の空や海の美しさにも癒やされます。外敵が多く、大きく成長できるのはごくわずかで、北太平洋を回遊してふるさとの砂浜に戻ってくるのは20年後だそうです。絶滅の危機にあるアカウミガメ。夏休み、親子で環境問題について考えるきっかけに。(由)
●長谷川まりる 作●ポプラ社(2025年6月)●19.4×12.6cm/263頁●定価1,600円(税込1,760円) ※対象年齢:小学校高学年から
3月のある日、死にかけていた中学生の少年が生き返った。生も死もない世界から「生きる」を知りたくてやってきた「魂」が、彼の体の中に入り込んだのだ。ただし、器としての体が保つのは1年だけ。友だちとふざけ、誰かを好きになり、時には傷つきながら「魂」は知っていく。うれしいことも苦しいことも、生きているからこそ味わえるのだと。だからこそ、この世は生きる価値がある。(C)
●石津ちひろ 詩 荒井良二 絵●岩波書店(2025年8月)●20.6×16.6cm/40頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:幼児から
詩と絵は相性がいい。そう感じさせ、大事に手元に置いておきたくなる一冊です。花や猫、空をテーマにした身のまわりの風景を切り取った詩が、色鮮やかでのびのびとした絵とあいまって、今いるところから広い世界へと解き放たれるような爽快感です。母にあてた手紙のような最後の一篇は、空を見上げながらゆっくりと味わってください。人生のいかなるときにも、空はすぐそこに。(七)
●ソフィー・ブラッコール 作 山口文生 訳●評論社(2025年11月)●26×25.8cm/32頁●定価2,000円(税込2,200円) ※対象年齢:小学校低学年から
「ウマになれたらいいのにな」と願う女の子の、馬になってやりたいことが描かれていきます。走り回り、妹を乗せ、水泳大会にも出場! 「いつもはくるまいすのわたしだって」……そんな彼女の日常に思いをはせられるのは高学年からかもしれません。それでも、できないからこそやってみたい思いが各場面から伝わります。最後に描かれたのは、一番の夢なのでしょう。胸に沁みる一冊。(瑞)
●中山久美子 著●大和出版(2025年2月)●18.8×13cm/215頁●定価1,700円(税込1,870円)
イタリア人と結婚し、フィレンツェ郊外で暮らす著者が、リアルな日常をつづっています。故郷を愛し、家族や友人を大切にする。おしゃべりが尽きず、おおらかで適当……それでいて、何でも受け入れる懐の広さを感じます。休暇を過ごすビーチは赤ちゃんから高齢者まで、みんなのもの。仲間が車いすを抱え水辺まで運び、一緒に楽しむ姿も。寛容さ、今この時を大事にするイタリア流、うらやましい。(a)
●二村高史 著●草思社(2025年2月)●18.8×13.1cm/375頁●定価2,200円(税込2,420円)
イタリアの地方を、ローカル鉄道と路線バスを乗り継いで隅々まで旅した紀行文。タイトルの「果てしなき」には、一度訪れた場所でも見のがしたものがあると、また行きたくなるという熱い思いが込められている。地図を見ながら読み進めるうちに、片田舎のバスターミナルを探しあぐねる著者とともに旅をしているような臨場感を味わえて、わくわくした。イタリア好きの方にはぜひ読んでほしい。(万)
●中脇初枝 再話 アヤ井アキコ 絵●あすなろ書房(2023年3月)●26.3×18.8cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:幼児から
ある日、プッチェットはお気に入りの帽子をなくしてしまいます。帽子を見つけたチョッケットは、「パンをくれなきゃ、帽子はあげない」。そこでパン屋さんに行くと、「ミルクをくれなきゃ、パンはあげない」——。次から次へと話が積み上がっていく楽しいイタリアの昔ばなしです。果たしてプッチェットの元に帽子は返ってくるでしょうか。テンポがよく読み聞かせにもぴったりです。(C)
●シルク 著●KADOKAWA(2025年3月)●25.7×18.2cm/111頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:幼児から
工作本は数あれど、本書は大人がすべき仕込みが少なくてありがたい。使う材料は紙コップ、ペットボトルのキャップ、洗濯ばさみなど身近なものばかり。さらに作った物はおもちゃとして活躍。「ゲームみたいに遊べるおもちゃ」など構成に工夫があり、子どもの年齢に合わせて選ぶ楽しみも。写真を多用した工程は直感でわかりやすく、気づけば小2の娘はピンポン・デリバリーに挑戦していました。(法)
●セシル・ジュグラ+ジャック・ギシャール 文 ローラン・シモン 絵 山本萌 訳●NHK出版(2025年9月)●22.7×20.2cm/25頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:幼児から
家の中にある身近なものを使って遊びながら科学に親しむことができる絵本シリーズの一冊です。本書のテーマは「ガラス」。コップを使ってろうそくの火を消したり、コップの下のコインを消したり、コップの中に台風を作ってみたり。手品のような実験がたくさん紹介されています。難しい理屈はさておき、まずは「どうして?」を大事に試してみてください。不思議を楽しむことが科学への第一歩です。(C)
●公益社団法人日本けん玉協会 監修●金の星社(2014年9月)●18.8×12.8cm/112頁●定価1,200円(税込1,320円) ※対象年齢:小学校中学年から大人
持ち方から始まって、やさしい技から難しい技まで90種類以上が、写真と図で丁寧に解説されています。けん玉の手入れの仕方や糸の付け替え方、左利き用に糸をセットする方法もわかります。学童クラブでも人気のけん玉。運動量もありますし、脳トレにもいいそうです。子どもからシニアまで使える日本けん玉協会監修の入門書の決定版です。涼しいお部屋でけん玉始めませんか?(由)
●新城道彦 著●新潮社(2023年6月)●19.1×12.8cm/293頁●定価1,750円(税込1,925円)
14世紀末に誕生した朝鮮王朝では、王位を巡る争いや官僚による権力闘争が絶えなかった。争いに勝った側に、自分たちこそが正しく、それまでの不正を正さねばならないと考える価値観があったこと、儒教の見解の相違などから、血で血を洗う政争が繰り返された。さらに朝鮮半島の歴史に大きく作用したのが、中国、日本、ロシア、米国といった国々の思惑に翻弄されてきたという地政学的要因だ。特に近代以降の記述について私自身は著者とは見方が異なる部分もある。それでも朝鮮王朝まで遡った歴史を知ることは、朝鮮半島の今を理解するのに役立つ。(M)
●川原繁人 著●朝日新聞出版(2025年10月)●17.2×10.7cm/263頁●定価950円(税込1,045円)
生成AI搭載の「おしゃべりアプリ」を、言語習得期の幼児が使用している現状に、二児の父である言語学者は切実な危機感を込めて警鐘を鳴らす。AIは主に書き言葉を学習データとし音声情報を人工音で話す。本来子どもは周囲の大人からの語りかけを通して言語を学ぶ。言葉の背後には身体や感情があり、五感すべてに与えられる刺激が育ちの原動力となる。AIの出力と人間の言語は本質的に異なる。与えるとすれば特定の目的意識を持ち、養育者と一緒に使うことを提案する。ヒトが言葉を獲得していくプロセスも解説され、それもとても興味深い。(か)
●中西祐子 著●岩波書店(2025年5月)●21×14.8cm/76頁●定価680円(税込748円)
先進諸国で大学進学の男女格差が最も大きい国、日本。理由としてジェンダーの再生産をする学校教育のあり方や親による教育選択に見られる男女間格差があげられる。大卒女性の学歴やスキルが低く評価される労働市場の現状や、先進諸国では女性のほうが高学歴であること、「医学部入試不正問題」にも言及。女性が再就職先としてパートタイムを選ぶのは主体的な選択のように見えるが、現実的には社会構造によってそれしか選べない状況に追い込まれていると留意をうながす。最も根深く、改革が急務とされる場は労働市場であるとの指摘に深く首肯する。(薫)
●早尾貴紀 著●平凡社(2025年2月)●18.8×12.8cm/253頁●定価1,900円(税込2,090円)
<10.7>蜂起のわずか2週間前、ネタニヤフ首相が国連総会で演説した「新中東構想」。示された地図では歴史的パレスチナ全土がイスラエルのナショナル・カラーの青に。パレスチナ侵攻は20世紀の最も残虐な大量虐殺の一つ。この本ではシオニズム運動からイスラエルという国の成り立ちやオスロ合意後のイスラエルの現状がわかります。かつて列強諸国が「分断して統治せよ」としてアラブ世界を引き裂いてきたことで、パレスチナは今も大国の思惑に翻弄されています。これは遠い国の話ではなく、日本の私たちも知っておくべき問題です。(洋)
●ロサ・リクソム 著 末延弘子 訳●みすず書房(2025年7月)●18.8×12.8cm/215頁●定価3,300円(税込3,630円)
ソ連崩壊直前のシベリア鉄道が舞台。モスクワからウランバートルへ向かう車内で、偶然同じコンパートメントに乗り合わせた、大酒飲みで粗野でおしゃべりな中年男性と、ソ連に留学中の寡黙なフィンランド人少女の物語。車窓を流れる荒涼たる自然と陰鬱とした街々の風景。途中下車した街を散策するふたり。気持ちに生まれるほんのわずかな変化。相いれないふたりの距離感が静かに変化していくさまと車窓の風景が重なり、シベリアの白い景色のような余韻が残りました。(桂)
●行司千絵 著●岩波書店(2025年9月)●19.3×13.5cm/266頁●定価2,400円(税込2,640円)
戦時中に青春を生きた3人の服と人生の物語。ちひろの憂いを帯びた色彩と絵。のり子のシンプルで上質な装いと詩。淑子のドキドキするようなコラージュ作品。美しいものへ誠実にまなざしを向けた3人の素顔が浮かび上がってくる。戦中戦後を生き抜いた表現者たちは、美がもたらす豊かさを心から渇望していたのか。希望を託し、前にゆくための装いだったのか。装いはその人自身であり、作品のようにも感じられた。自らの装いと人生にも眼を向けるひとときとなった。(麻)
●イーライ・ブラウン 著 三角和代 訳●東京創元社(2022年8月)●14.9×10.5cm/494頁●定価1,200円(税込1,320円)
「命が惜しければ最高の料理を作れ!」。主人を女船長マボットに殺され、拉致された料理人ウェッジウッド。自らの命をかけ、お粗末極まるキャビンで食材を調達し工夫をこらし、発酵種まで自らのふところで温め育てる。敵との壮絶な戦いや逃亡シーンには目が釘付けに。アヘン戦争や多人種が登場する少しぶっ飛んだ設定もおもしろい。次第に、力強く魅力的なマボットや日々奮闘するウェッジウッドの料理に夢中になり、早く読みたくてたまらないほどに! これぞ読書の醍醐味です。(麻)
●梨木香歩 原作 近藤ようこ 漫画●新潮社(2025年9月)●21×15cm/245頁●定価1,650円(税込1,815円)
季節はめぐって秋から冬、そして春へ。相も変わらず売れない作家の綿貫は亡き友の家守をしている。たぬきにだまされて山に松茸を取りに行き、小鬼のふきのとう探しを手伝い、亡き友が逝ってしまった世界を垣間見る。別の世界の入り口に招かれた綿貫の選択はいかに? ゆるやかに流れていく時間と豊かな自然、出会う人々との細やかな感情のやり取りに、古き日本の豊かさを感じました。(真)
●山田侑平 訳・監修 共同通信社出版センター 編●共同通信社(2015年8月)●18.8×12cm/174頁●定価900円(税込990円)
憲法を含め戦後日本の占領方針を決定した「ポツダム宣言」を「政治的・思想的解釈はなく」読む。英語原文に文語体訳、現代語訳が加えられ、高校生でも十分理解できる。当時の首相が宣言を「黙殺する」と発言した後、宣言で示唆された通り悲劇が起こった。海外事情を知る外交官たちの懊悩の文書、「降伏文書」なども掲載。宣言から受諾まで20日かかったのはなぜか。必読の資料集。(戸)
●山田英生 編●筑摩書房(2025年8月)●14.8×10.5cm/378頁●定価940円(税込1,034円)
『戦争と漫画』シリーズ最終巻。戦争が終わり日本は焦土と化したが人々はそこで生きていかねばならなかった。過酷な生活を強いられた戦争孤児、子を亡くした遺族の哀しみ、死さえ招いた厳しい食糧事情、占領軍との関係……手塚治虫、つげ義春、水木しげるら名だたる作家らの漫画から、読者は当時の容易ではない暮らしを肌で感じることができるだろう。巻末に藤原辰史氏のエッセイを収録。(星)
●朝日新聞取材班 著●朝日新聞出版(2025年8月)●17.2×10.7cm/241頁●定価870円(税込957円)
婚姻期間が20年以上の熟年離婚は3万9810件。統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けている通り、離婚は他人事ではない。人生100年時代、卒婚、熟年婚活が盛んな一方、「熟年離婚」にも注目が集まる。妻は子育てがひと段落して決断し、夫の定年の2〜3年前から準備に動きだすという。離婚は経済的に損か得か?との話に興味は募る。作家の金原ひとみさんの体験談や弁護士、離婚カウンセラーの解説、慰謝料・養育費など「キーワードで知る熟年離婚」も参考に。(薫)
●寺門美和子 著●河出書房新社(2025年8月)●18.8×12.8cm/190頁●定価1,630円(税込1,793円)
予想以上に強力な実用書!ですが、自身もつらい離婚を経験した著者がいう「大切なのは離婚してもしなくても幸せになること」には愛がある。納得して進むための心の整理方法など見失いがちなことにも気づきます。めでたく人生の主導権を手にして決断するだけになったとしても、悩みは尽きないもの。そんな時には左上の「特集 宇宙への扉」で美しさに癒やされ、しばし地上の憂さを忘れるのもアリ!(法)
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