本の花束
各品目の詳しい情報は、WEBカタログでご確認ください。
「本の花束」40周年記念イベントを開催しました。
組合員で構成する「本選びの会」が選んだ良質な本を毎月掲載し、共同購入する「本の花束」。1984年に始まった活動が40周年を迎えたことを記念し、イベントを開催しました。
今後も「本の花束」を通じて、組合員から組合員に読んでもらいたい、感想を伝えあいたくなるような本の共同購入を続けていきます。
WEBカタログはこちら
●斎藤真理子 著●イースト・プレス(初版:2022年7月/増補新版:2025年1月)●18.8×12.8cm/368頁●定価1,800円(税込1,980円)
韓国の作家ハン・ガン氏のノーベル文学賞受賞は記憶に新しい。彼女の作品も数多く翻訳し、日本で韓国文学を広めた立役者とも言われる著者。本書では『82年生まれ、キム・ジヨン』を起点にセウォル号沈没事故などの韓国の現代から朝鮮戦争や済州島四・三事件といった近代史を文学と絡めて読み解く。要にあるのは朝鮮戦争だとし、その戦争に日本も大きく関わっているが、このことが日本で認知されていないとも。『別れを告げない』を始めこの2年で出版された重要作も網羅。(薫)
●キム・ナレ 著●朝日新聞出版(2023年4月)●25.7×18.2cm/135頁●定価1,400円(税込1,540円)
チヂミにトッポッギ、ビビンバ、チャプチェなど皆が大好きな定番料理に始まり、浅漬けから本格的な白菜キムチの作り方まで。キムチをアレンジしたキムチうどんも絶品、ツナのふりかけは常備菜に。体調を崩したことを機に「自分を元気にする」という視点で著者が考案したニンニクや塩分控えめなレシピは心にも体にもうれしい。辛い料理が苦手な人にも。韓国料理の本を持つならこの一冊!(薫)
●小田真規子 著●NHK出版(2024年4月)●25.7×21.1cm/111頁●定価1,100円(税込1,210円)
料理が得意ではない方にも、だんだん大変になってきた方にもおすすめ。1食につき、主菜、副菜の2品だけと決めて、たんぱく質と野菜たっぷり、栄養バランスばっちり、塩分控えめの献立を紹介しています。普段の食材+シンプルな手順で毎日の食事作りの強い味方に。ハレの日レシピの「レンジいなりずし」や「ユッケ風ちらしずし」は、盛り付けも美しく、食卓を華やかに彩ってくれそうです。(a)
●田中可奈子 著●主婦の友社(2022年5月)●25.7cm×18.3cm/79頁●定価1,360円(税込1,496円)
通常多量の油分が必要なシフォンケーキですが、この本ではなんと油不使用。なのにしっとりふわふわに仕上がるのは米粉と豆乳のなせる技だそう。米粉だからふるう手間がいらず、ノンオイルで洗いものもラクといいことづくめ! チキンや野菜を使ったお食事系あり、冷凍術ありと充実の内容。栄養価が高く、消化にもよいのでお年寄りから子どもまで安心して食べられます。こんなレシピを待ってました!(な)
●若林理砂 著●ミシマ社(2024年5月)●18.8×13cm/250頁●定価1,800円(税込1,980円)
問診に時間をかける鍼灸師は、「謎の症状」に遭遇する確率が高いという。人気の鍼灸治療室を営む著者が、病院に行くほどではないけれど気になるさまざまな症状についてその原因と対処方法をアドバイスする。「仰向けで寝られない」「マニキュアを塗ると息が苦しくなる」など私自身が気になっていた症状も、東洋医学の古典から引用した説明で納得。楽しみながら、心身の養生に役立ちます。(万)
●植森美緒 著 金岡恒治 監修●ダイヤモンド社(2024年2月)●21×15cm/125頁●定価1,300円(税込1,430円)
ズキンッ! 油断している時に突然、痛みは襲ってきます。そして仕事も家事もままならなくなってしまいます。本書の「痛みが消える動作心得」は、会議で、買い物で、電車で、自転車で、トイレで、ベッドでと、さまざまな場面での痛みが消える動作が、イラストとともにわかりやすく紹介されています。簡単な動作は、すぐに試す価値ありです。辛い痛みから解放されましょう。(深)
●キム・へナム 著 岡崎暢子 訳●ダイヤモンド社(2024年4月)●21×15cm/303頁●定価1,500円(税込1,650円)
パーキンソン病と闘うソウル生まれの精神科医。彼女が後悔しているのは、「人生をあまりにも『宿題をこなすように送ってきたこと』」。「医師として、母親として、妻として、嫁として、娘として、いつもすべてを完璧にこなそうと苦労してきました」——。彼女が不治の病を得て見つけた“人生の意味”には、「どんな苦しい時でもユーモアを忘れない」など後悔なく生きるヒントに満ちています。(深)
●近藤千恵+親業訓練協会 著●大和書房(2024年5月)●18.8×13cm/235頁●定価1,600円(税込1,760円)
子どもから「人を殺すかもしれない」と言われたら……? 臨床心理学から生まれた子どもとのコミュニケーション方法は一読の価値あり。子どもの話を決めつけ、先回り、上から目線の言葉で遮っていませんか? 思い当たるなら本書で「親業」を知ってほしい。聞き方ひとつで子どもの育ちが変わる。小〜大学生までの親子会話実例集は、わが家のことかと思うほどリアルで参考になりました。(な)
●森百合子 著●大和書房(2024年3月)●15×10.6cm/281頁●定価800円(税込880円)
19年に渡り、毎年北欧5か国を巡ってきた著者の旅エッセイ。旅のきっかけになった建築の話にとどまらず、真夏のダンスイベントでのスウェーデン人の半端ではない熱量や、あちこちで出会ったノルウェー人の世話好きな様子、デンマークの友人との程よい距離感など、現地に飛び込み経験を重ねたからこそのエピソードが満載です。国民性の違いや関係性が垣間見られ、興味深い本でした。(a)
●西田啓子 著●青幻舎(2024年5月)●19.2×13.3cm/406頁●定価2,600円(税込2,860円)
著者はフランス在住のファーマーズフローリスト。パリ近郊の小さな村から、季節のたよりが届きました。凍てつく銀白の麦畑、可憐なハーブの花、ガーデンローズの花束、色とりどりの紅葉。さまざまな表情を見せてくれる植物の魅力を切り取った、1日1枚の写真。添えられた文章からも自然の持つ豊かさと、ともに暮らす喜びが伝わってきます。〈本選びの会〉メンバーを魅了した美しい一冊です。(玲)
●小川奈緒 著●技術評論社(2024年5月)●21×14.9cm/223頁●定価1,600円(税込1,760円)
自宅をリノベーションして暮らす著者は50代。暮らしの愛用品をその背景から紹介しています。まるで著者の住まいで、インテリアやキッチン道具、掃除用具選びや暮らし方までお話を聞いているかのよう。何十年と寄り添う家具もあれば、ソファを手放し吉村順三さんの 「たためる椅子」を迎え入れたり。何に軸足をおいた暮らしをしたいのか、住まいを通じて生き方を見つめ直す一冊です。(亜)
●池井昌樹 詩 植田正治 写真 山本純司 企画と構成●集英社(2012年10月)●19.6×18.9cm/32頁●定価1,200円(税込1,320円)
ひとりの編集者があるとき耳にした一編の詩に胸を打たれ、なんとしてもという熱く強い思いで作った詩と写真による一冊です。池井昌樹さんの詩と、植田正治さんの写真。「生きていた時代も、生活の場所も、扱う芸術のジャンルも異なる」ふたりをつなぐ、奇跡のような本。ページをめくるたび心が震えました。「手から、手へ」と継がれてゆくものを、みなさんにも受け取ってほしいです。(理)
●武田砂鉄 著●講談社(2023年9月)●18.8×13cm/265頁●定価1,600円(税込1,760円)
82年生まれ。昭和末期から平成令和とつきまとわれてきた「なんかいやな感じ」を追いかけるように、自分と社会を結ぶ線を振り返る。政治家の屁理屈にレンタルビデオ店の衰退、テレビからSNSまで情報をめぐる変化——。「最近の風土というのは批判・悪口・文句を同じ箱に入れて、ああいうのよくないねと肩を組む姿勢が目立つ」と刺す。この40年の記録を、今と未来を見る肥やしにしたい。(亜)
●平野卿子 著●河出書房新社(2023年5月)●17.3×10.7cm/213頁●定価860円(税込946円)
昭和の映画に出てくる女性たちの言葉遣いに何となく違和感をもったことはありませんか? 古めかしい感じの「女ことば」は日本に固有のもの、でも「女らしい言い回し」は欧米語にもみられるそうです。女らしさ、男らしさの規範は私たちの意識の深いところに浸透し、言葉の世界を縛っているのだと実感。何気なく使っている言葉を手がかりに、自分自身のジェンダー観を改めて見つめ直すことに。(水)
●小西英子 作●福音館書店(2019年12月)●21.6×20.6cm/24頁●定価900円(税込990円)※対象年齢:幼児から
美味しそうなのり巻きがいっぱい並んだ表紙を開くと、そこには巻きすが。のりを敷き、すし飯を広げたら、彩り豊かな具を乗せていく。のり巻きを作る工程が丁寧に描かれています。クライマックスは巻くシーン!一緒に巻きすを巻いて、のり巻きを仕上げる気分を味わうことができます。作って食べることの喜びが伝わる絵本です。読んだ後はぜひ、のり巻き作りに挑戦してみてください。(C)
●韓国・朝鮮の昔話 金森襄作 再話 鄭スク香 画●福音館書店(1997年11月)●26.6×19.6cm/32頁●定価1,000円(税込1,100円)※対象年齢:幼児から
朝鮮半島で神獣として慕われてきたトラの昔話。踊ってお祈りすると、病気を治したり豊作の願いをかなえる不思議な力を持ったおどりトラ。ある日獲物を捕まえようとした大事な場面で、聞こえてきた笛の音に手や足が勝手に踊りだしてしまい……縦開きのページで木の上のきこりに迫るトラばしごは迫力満点。怖いはずのトラがどこかユーモラスでチャーミング。読み聞かせにもおすすめです。(由)
●ふくながじゅんぺい 作●こぐま社(2022年5月)●18.1×29.5cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円)※対象年齢:幼児から
緑色のひもを見つけた動物たちは、へびだと気がつかずに、遊び道具として楽しみます。ねずみの滑り台やうさぎの長縄跳び、ゴリラのブランコなど。いつになったら動物たちが、ヘビに気がつくのかなとドキドキです。最後に動物たちがヘビだと気がついておしまい! ではなく、その後に、さらにびっくりすることがあります。読み終わってすぐにもう一回読みたくなる楽しい絵本です。(春)
●佐野洋子 作・絵●講談社(2024年4月)●26×18.6cm/32頁●定価1,700円(税込1,870円)※対象年齢:小学校低学年から
「ぺこぺこしたやつ」のお話をせがむ子どもに、お父さんはこんなお話をしてあげました。誰にでも何にでも頭を「ぺこぺこ」下げる王様がいた。隣の国が攻めて来るも、兵士たちはぺこりとやるから大砲も鉄砲も当たらない。侵略してきた隣の王様は、ぺこぺこと歓迎したら帰ってしまい、平和が戻った——。「ぺこぺこ」の音と親子のやりとりがなんともチャーミングで、思わず微笑んでしまいます。(法)
●平坂寛 文 キッチンミノル 写真 長嶋祐成 絵●福音館書店(2024年5月)●25.6×19.6cm/40頁●定価1,300円(税込1,430円)※対象年齢:小学校中学年から
YouTubeで大人気! 登録者数82万超えの平坂寛さんが、深海魚を捌いて、刺身で、フライで、煮付けで、おいしく食す!その過程からみえてくる深海を生き抜く知恵とは。ノドグロのノドはなぜ黒い? キンメダイの目はなぜうまい? 数々の不思議にグッとせまった解説には、感心しきりでした。平坂さんいわく「クラクラするほどおいしい」アンコウの「どぶ汁」、とても気になります!(楽)
●大石真 作 北田卓史 絵●理論社(1999年2月)●21.6×15.6cm/189頁●定価1,200円(税込1,320円)※対象年齢:小学校中学年から
まちのみんなが憧れる高級洋菓子店「金泉堂」。その金泉堂のショーウインドーのガラスを割った犯人だと、疑われた小学生が、名誉を回復しようと奮闘する物語です。本作品が発表されたのは昭和時代ですが、小学生が大人に立ち向かう姿や、魅力的なキャラクターは、令和の今でも健在です。テンポのよい展開に加え、ラストの意外な展開に、大人も子どももスカッとしますよ。(春)
●佐藤清隆 文 junaida 絵●福音館書店(2023年10月)●23.5×17.5cm/41頁●定価2,000円(税込2,200円)※対象年齢:小学校中学年から
人類が初めてカカオに出会ったのは1万5千年前、カカオを飲み物として飲んだのは5千年前、今食べられているようなおいしいミルクチョコレートができたのは1875年のこと。カカオの歴史、チョコレートの作り方、おいしさの理由など、チョコレートの秘密が詰まった一冊です。junaidaさんの美しいイラスト、板チョコを模した装幀も魅力的。チョコレート好きのすべての方に。(C)
●吉田俊道 著●家の光協会(2024年2月)●21×15cm/135頁●定価1,700円(税込1,870円)
最近よく聞く「菌ちゃん農法」。菌(微生物)の働きによって農薬や肥料に頼らず野菜を育てる——その土作りの方法をカラーの図解で詳しく説明しています。菌を利用する発想に驚きますが、土中や腸の細菌に注目が集まる今、東京大学や九州大学などでも研究されているそう。生ごみや雑草など身の回りのものを活用するのもいい。プランターや堆肥袋でもできるので、誰でも始められますよ。(空)
●あんずゆき 文●佼成出版社(2016年6月)●21.6×15.5cm/95頁●定価1,300円(税込1,430円)※対象年齢:小学校中学年から
ある小学校の子どもたちが生ごみを活かして野菜作りをする話。なにより子どもたちと指導者の吉田さんとのやり取りが楽しい!また、子どもたちの変化も。菌の話から生ごみを「汚いゴミ」と見なさなくなり、菌によって温かくなった土に触れてその存在を確信する。野菜嫌いだった子たちも育てた野菜をおかわり。土づくりから口に入るまでをこんなに楽しく学べる!それを追体験できる一冊です。(空)
●STEPHANIE HOUSLEY 著●主婦の友社(2023年8月)●25.7×19.1cm/279頁●定価3,000円(税込3,300円)
自由に泳ぎまわる海の生物、ハロウィンの仮装をするクマ、クッションのポケットから顔を出すネコたち……NY発のインテリアブランド「CORAL & TUSK」のデザインはどれもユーモアにあふれ、笑顔を運びます。本書はその設立から約15年間を追った作品集。図案を描き、刺繍用ミシンで丁寧に仕上げられた一作一作には、設立者の思いが込められています。手元において繰り返しながめたい、そんな一冊です。(a)
●暮しの手帖社 編●(2025年1月)●28×21cm/184頁●定価1,000円(税込1,100円)
料理特集は、お祝いごとや人が集まる時の食事に向けた「手巻き寿司」。味つきの刺身や子どもも大満足の肉や玉子を使う具材、味に変化をつけるタレなど、料理家・今井真実さんの新鮮で楽しいアイデアが満載です。春を待つこの時期にぴったりのランプシェードの作り方も。和紙など好みの紙で作れて電池式のLEDライトで電源も不要。ベッドサイドや玄関などに明かりがほしいときに便利です。(芙)
●堀川惠子 著●講談社(2024年7月)●14.7×10.5cm/487頁●定価950円(税込1,045円)
陸海軍の仲が悪かった日本。長い鎖国の影響もあり陸軍は自前で兵站輸送船を持たねばならず、その拠点が広島の宇品港。船舶・兵站の重要性を理解しない中央政府のもと、民間の船や船員まで動員したのが太平洋戦争末期。結果、南方の戦死者のほとんどは餓死、あるいは戦地にたどり着くこともできなかった。膨大な資料を元に、陸軍の海上輸送というあまりない視点で敗戦を描く力作。ページをめくる手が止まらなかった。そして、著者の取材の最初の目的、なぜ原爆が落とされたのが広島だったのか。著者が導き出した答えはあまりに非情で言葉を失う。(戸)
●上脇博之 著●岩波書店(2024年7月)●17.3×10.8cm/192頁●定価900円(税込990円)
自民党の裏金問題が争点の第50回衆議院選挙は国民の怒りが投票で示された。政治家の収入源は? 寄付や企業献金の仕組みって? パーティ券の何が問題? 「政治とカネ」について定めた政治資金規正法が「ザル法」と批判されるわけは? 合法的裏金とは?などの疑問に、多くの政治家を刑事告発してきた上脇氏が答える。本書ではさらに金権政治を加速させた90年代政治改革まで言及し、「イエスマン」政治の原因となった小選挙区制、国会議員を資金中毒にした政党交付金まで徹底検証する。「金権政治を根本的に変えるのは継続する国民の怒り」にうなずく。(か)
●本田由紀 著●筑摩書房(2021年10月)●17.3×10.7cm/271頁●定価920円(税込1,012円)
日本がどんな国なのか、多方面から共通の尺度で比べた国際比較データを使って特徴をあぶり出す。家族の関係調査では日本は満足度が低い。若者から見た親は互いに人格として関係を取り結ぶ相手ではなく、収入や世話などを実務的に提供してくれる機能としての存在だ。教育面では国際比較テストの成績は高いが、学ぶことの楽しさや意義を実感できない。仕事に就いても非正規・長時間労働で低賃金。親世代よりも生活水準は良くならない。学校、会社、家族という集団に個人を囲い込むことで成り立ってきた「戦後日本型循環モデル」を変えていく必要がある。(晴)
●カル・フリン 著 木高恵子 訳●草思社(2023年5月)●19.4×14cm/399頁●定価3,400円(税込3,740円)
人間に見捨てられた12の場所、チェルノブイリ、荒廃都市デトロイト、外来種侵略を受けたタンザニアのアマニなどの荒れ果てた地……著者はそれらの土地を巡り描きます。それは「私たちが去れば、自然は戻ってくる」という単純な話ではありません。人間は自らの傲慢さを知り、「地球は地球だけが知っている方法で反応し適応するのだ」ということに気付くときです。もう戻れないのかもしれませんが、まだ希望はあるということを教えてくれてもいます。美しい文章表現の本です。(洋)
●島田潤一郎 著●みすず書房(2024年4月)●19.4×13.6cm/253頁●定価2,300円(税込2,530円)
ひとりで出版社を始めた著者が、子ども時代から今に至るまで、読んできた本について綴った散文集。フリーターをしながら小説家をめざした日々。ブラック企業勤めに疲れ果てても読んだ『魔の山』。小さな声を大切にしたいと思った『アンネの日記』。義理の父に近づく最期を感じながら読んだ本。苦しいからこそ本を読み、身を清めるような思いで本にふれる。静かな文章の中にもあふれ出る本への深い思い。人はなぜ本を読むのか。自分の若かった頃と重ね合わせながら読みました。(真)
●キャサリン・レイシー 著 井上里 訳●岩波書店(2023年8月)●19.3×13.6cm/243頁●定価2,800円(税込3,080円)
さまよう不思議な存在・ピュウ。言葉がなく、性別も年齢も生い立ちもわからない。教会の信者席で発見されたことからピュウ(信者席)と呼ばれるようになった。ピュウを保護した村人たちは、謎めいたピュウにみな戸惑う。しかし物言わず、何者でもないピュウを前に、次々と心の奥底に秘めた悩みや苦しみを打ち明け始めるのだ。穏やかで、時が止まったように見えるその小さな村に、少しずつ変化が生じていく。ピュウをどう見るか、読者の私たちも一人ひとり異なるのではないか。(き)
●丸山正樹 著●東京創元社(2024年2月)●14.9×10.5cm/320頁●定価740円(税込814円)
両親と兄がろう者の家に生まれ、小さい頃から家族と社会を繋げる役目を背負わされていた聴者の主人公。生活のため仕方なく手話通訳士になり、法廷通訳を務めることに。コーダ(親がろう者で聴者の子ども)という生い立ちや、意思疎通ができないまま取り調べをされていた被告人の通訳に向き合う真摯な姿が描かれる。さらには「日本手話」と「日本語対応手話」の違い、人権、えん罪などの社会問題も絡めて、ろう文化にふれられる社会派ミステリー。新たな価値に出会える一冊。(美)
●ブレイディみかこ 著●KADOKAWA(2023年10月)●18.8×13cm/255頁●定価1,500円(税込1,650円)
シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)をする「あたし」を主人公とした連作短編集。「あたし」は傷つき、疑問に思い、憤る。ホステスは失礼な態度や言葉を許容することでお金をもらう、ベビーシッターはムカついたりしないと思われている等々。金銭的に報われず社会的にも軽視されることで、「あたし」のソウル(魂)は傷つくが、人は人とのふれあいの中で生きていくのではないかとも気付くのである。魂同士が交流する「シット・ジョブ」こそ報われるべきなのだ。(M)
●西垣通 著●岩波書店(2023年1月)●17.3×10.8cm/193頁●定価900円(税込990円)
DX(オープンネット化)やメタバース(仮想空間でオンラインでの共同作業を可能にするしくみ)に遅れ、デジタル後進国と評価される日本。デジタル先進大国米国は、すべてを神の被造物と考えるキリスト教の影響もあり、デジタル技術を駆使してアメリカニズムの拡大普及をもくろむ。しかしその影で社会に深刻な分断も。中国・ロシア・EUではデジタル技術を統制し、運用している。そもそもAIは過去データから未来を統計的に予測するもので、AI自体は意味を解さない。米国追従ではなく、日本の文化に根差した長続きする効率化のあり方をめざすべきだ。(晴)
●今井翔太 著●SBクリエイティブ(2024年1月)●17.4×11.4cm/253頁●定価900円(税込990円)
著者は生成AI最先端を行く東大・松尾豊教授門下生。生成AIの技術的な仕組みを「数式を使わずどんな人にもわかる」ように説明してくれる。「どんな人」最底辺の私にも理解できた! さらに消える仕事、残る仕事、創作との関係、法的問題、未来について等、筆者の体験や意見を交えてわかりやすく記述される。生成AI革命でお祭り騒ぎ状態だという筆者の周辺。一方、AI開発を核戦争にたとえる研究者もいるという。たしかに巻末の師匠・松尾教授との対談を読んで、背筋がぞっとした。この界隈を覗いておきたい方、AI研究者について興味ある方にもお薦め。(戸)
●ヨハン・エクレフ 著 永盛鷹司 訳●太田出版(2023年9月)●18.8×12.9cm/235頁●定価2,200円(税込2,420円)
最近は夕暮れ時に飛び交うコウモリや街灯に群がる蛾たちを見かけなくなった。現代の「光害」をひもとく著者の詩的な語りから多くのことに気付く。人工の光に惹きつけられた昆虫は花の蜜を吸えず花粉も運ばず交尾の相手も見つけられない。街の明かりに引き寄せられたウミガメの子たちは海に帰れない。動物、昆虫の生態リズムや繁殖には、月や星の光が必要だったのだ。人類が壊してきた生態系や失われた闇を取り戻す術を知り、多くの人の気付きが「沈黙の春」の訪れを回避できると願いたい。(麻)
●ナネット・へファーナン 作 バオ・ルー 絵 おがわひとみ 訳●評論社(2021年12月)●18.4×26.1cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円)※対象年齢:小学校低学年から
1年に1回1時間。世界中の人々が、それぞれの場所で明かりを消す「アースアワー」の取組みを紹介する絵本。世界遺産であるオペラハウスや万里の長城、ピラミッドでも実施されています。2025年は、3月22日(土)午後8時30分からがその時間。キャンドルを灯すもよし、夜空を見上げるもよし。地球をぐるりと一周する「消灯リレー」に、私たちも参加してみませんか?(理)
●人形の東玉 監修 サンチャイルド・ビッグサイエンス編集部 文・構成 田村孝介 写真撮影●ひさかたチャイルド(2019年1月)●20.5×23.5cm/28頁●定価1,300円(税込1,430円)※対象年齢:幼児から
人形の町・さいたま市岩槻区の工房を取材し、ひな人形が作られるプロセスを絵本にしました。職人さんは体を作る「着付師」と顔を作る「頭師(ルビ●かしらし)」がいること、「頭師」は石膏で顔の型をとる人、化粧を施す人などで分業していること、初めて知ることばかりでした。美しい七段飾りをじっくり鑑賞できるとじ込みの大判写真や、行事の由来と道具の意味の詳説もあり、日本の伝統行事を楽しく学べます。(法)
●田中サタ 著 真田ふさえ 画 三水比文 協力●福音館書店(2012年12月)●21.5cm×19cm/59頁/付録折り紙9.5×9.5cm(11枚) 8.2×8.2cm(37枚)●定価2,800円(税込3,080円)
児童文学作家の石井桃子が、美しい和紙のたとうの中に納められた折りびなを目にし、感動の声をあげたのがきっかけとなり、今から50年以上前に生まれた田中サタの本です。その後も版を重ね、海外でも多くの人に愛されてきました。男びな女びな、三人官女、五人囃子を付録の折り紙で、可愛らしい手のひらサイズで作ることができます。今年は祈りを込めて折った折りびなを贈ってみませんか。(R)
●チョ・セヒ 著 斎藤真理子 訳●河出書房新社(2023年7月)●14.9×10.5cm/443頁●定価1,300円(税込1,430円)
70年代に韓国で出版され、読み継がれている作品です。体に障害があり、仕事を転々として必死で一家を率いてきたお父さんが、立ち退きで住む家を追われます。そのお父さんが自分のことを「虫だ」というシーンがあります。読書会で出会った若い方が、「働く条件をめぐって雇用者と話をしているが、自分も虫だと感じます」と話されました。歴史がめぐって、今はこういう読み方がされるのだなと感じました。なぜこの作品が今の日本で読まれるかを考えることが、日本の変化を捉えるうえで有効だと思っています。(斎藤真理子さん)
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