本
●たいら由以子 著●婦人之友社(2025年7月)●21×14.9cm/126頁●定価1,600円(税込1,760円)
ごみを活かし、野菜を育て、豊かにおいしく食べていく。持続可能な循環する暮らしを目指すのは生活クラブと同じ。コンポストの生ごみ処理は意外にも簡単に続けられています。ごみ出しの回数が減ったうえに野菜と花を育てられるのがおもしろい。母娘3代と研究所の皆さんの取り組みが地域と自治体へと広がっていくのも納得。笑顔あふれ楽しそうな写真がいっぱいでやってみたくなるのです。(友)
●上田淳子 著●主婦と生活社(2025年6月)●25.7×18.3cm/95頁●定価1,600円(税込1,760円)
その日に食べきれる分だけを煮込まずササッと作ってしまうカレー。炒めた肉を野菜に乗せるサラダ。暑すぎてとても台所に立つ気にならないと思いきや、この本のおかげで次はどれを食べようかと楽しみができた昨夏でした。夏バテ知らずで元気に過ごせたのは本書があったから。上田さんならではのアイディアと親切な手順が頼りになります。食器も素敵。夏野菜もたっぷり摂れて栄養満点。(友)
●稲田俊輔 著●西東社(2025年4月)●21×14.9cm/159頁●定価1,600円(税込1,760円)
深い知識と確かな舌で食エッセイや料理本が人気の著者。今回は野菜そのものの楽しさを徹底的に追求し、手軽でシンプルな味付けのレシピを紹介する。「白菜とひき肉の食べるスープ」は、薄口醤油で味付けしただけなのに驚くほどのおいしさ。表紙の「ワタごと素揚げゴーヤー」はビールのおつまみにピッタリ。もちろん抱腹絶倒の解説付きで、食べておいしく読んで楽しい一冊です。(万)
●大平一枝 著●平凡社(2025年9月)●18.8×13cm/230頁●定価1,800円(税込1,980円)
台所を取材して歩く「東京の台所」シリーズの著者が、初めて自身の台所と暮らしをつづったエッセイ集。歳を重ねた今になってやっと気付いた料理のコツ。忘れられない台所や食べものの思い出。台所には「誰かを思い出したり、自分も大事にされていたのだという記憶を呼び覚ますスイッチがたくさんある」。そのスイッチを押しながら書かれたエッセイは、あたたかな記憶であふれています。(玲)
●中島美鈴 著●大和書房(2025年4月)●18.8×13.1cm/239頁●定価1,500円(税込1,650円)
昔も今もやめられない先延ばしがありませんか?試験前になぜか漫画を読んでしまったり、簡単なことも直前にならないと始めなかったり。NHK「あさイチ」でおなじみの著者は、6つのタイプに分けて「先延ばしグセ」の解決策を紹介。やることを書くことで可視化し、とりあえずやってみることでクセは克服可能だそう。「人生にかかわる根深い先延ばし」グセにも触れていて興味深い。(深)
●南雅子 著●SBクリエイティブ(2019年7月)●21×15cm/127頁●定価1,200円(税込1,320円)
股関節に痛みが出て整形外科へ。そのときに医師から教わった体操と同じものが紹介されています。 40代からは筋力が弱りはじめ、上半身の重みが股関節への負荷になるとあり、私もそうなのだと納得。歩ける寿命を延ばす上で重要な股関節の機能を保つための知識、歩き方のクセ修正法、ストレッチなどお金も時間もかからず、一読して損はなし。まさに「転ばぬ先のつえ」となる一冊です!(な)
●齋藤陽道 著●NHK出版(2025年8月)●21×14.9cm/125頁●定価750円(税込825円)
写真家の著者は聴覚障害を持つ。会話に苦労してきたが、高校で手話に出会い自由に話し合える喜びを知ったという。他者とのつながり方を模索していく中で、気持ちを伝えるのに言葉は必ずしも必要でないと思うに至る。大切なのは「話を聞く」ことではなく相手に向き合い、その「存在を聴く」こと。伝わらない絶望を知る著者だからこその真摯な姿勢に心打たれた。手話への理解も深まる本。(星)
●星野俊樹 著●時事通信社(2025年7月)●18.8×13cm/263頁●定価1,700円(税込1,870円)
文化的でインドア派、いわゆる「男らしさ」とは縁遠い子どもだった著者が、家父長的な家庭環境や男子校の場で、自分を押し殺してきた過去が痛々しく胸に迫ります。小学校教師となり、「ふつう」を押し付ける社会を変えようとジェンダー教育を実践していきます。子どもたちが、性別や環境に縛られず、自分らしく生きるにはどうしたらいいのか。息苦しさを打ち破る勇気をもらいました。(亜)
●主婦の友社 編●主婦の友社(2025年3月)●29.7×21.1cm/96頁●定価1,400円(税込1,540円)
「日常に、花を」。心潤う楽しみ方は人それぞれ。植えて育てる、生花やドライフラワーを飾る、誰かに贈る、花瓶など花にまつわるものを集める、花に会いに行く、写真を撮るなど。些細なことでも花を身近に感じられる話題の数々に心躍ります。中でも「花をめぐる旅」や「花を愛でる山歩き」の特集が魅力的!見頃の時期まで載っている便利な情報をたよりに、いろんな花に逢いに行きたいです。(空)
●荒木健太郎 著●KADOKAWA(2025年2月)●18.8×12.9cm/175頁●定価1,350円(税込1,485円) ※対象年齢:小学校中学年から
子どもと防災について共有していますか?「すごすぎる天気の図鑑」シリーズから最新の知見満載の「防災図鑑」が登場!いざというとき自分の命は自分で守れるように、多くの子どもたちに知っておいてほしいことばかり。富士山噴火、避難所で気を付けること、被災地支援など広く詳しく取り上げつつも、堅苦しくない文章で楽しく学べます。大人も読んで「防災」を家族共通の話題にしよう!(な)
●やまとけいこ 著●山と溪谷社(2025年3月)●18.8×12.8cm/159頁●定価1,600円(税込1,760円)
北アルプス・薬師沢小屋の厨房が舞台のイラストエッセイ。雲上の山小屋でどうやってお客さんに「おいしい!」を届けるか、奮闘の日々がユーモラスに描かれています。ヘリ輸送された貴重な食を生かし切る工夫と苦労は、食べることの根源を感じます。豚の角煮、豆腐担々麺などレシピも楽しい。「大自然のなかで命と命をつなげるお手伝い」という山小屋料理人の仕事に魅了されました。(亜)
●益田ミリ 著●ミシマ社(2025年10月)●21×15cm/149頁●定価1,600円(税込1,760円)
50歳の誕生日を一人で迎えた主人公が出かけた深夜のファミレス。近くの席で繰り広げられる同世代女性二人組の会話にひそかにノリツッコミをして楽しむ主人公。M-1を目指す二人組の「ジップロック最強伝説」や「Tシャツ似合わないたたり」に思わず爆笑。「ミシマ社創業20周年記念 著者渾身の描き下ろし」とあるとおりのおもしろさ。最後は主人公の同窓会で漫才を披露してもらうことに。(み)
●ラウラ・コピロウ 著●WAVE出版(2025年4月)●18.8×12.9cm/167頁●定価1,700円(税込1,870円)
日本に移住したフィンランド人が、外から自国を見つめたエッセイ。美しい自然やシンプルな生活様式、個々を大切にする教育、福祉制度など日本人が憧れを抱く側面だけではなく、なぜ互いに助け合う文化が根付いているのか、なぜ社会への信頼度が高いのか、フィンランドという国の神髄に触れることができます。それは異なる環境に生きる私たちにとっても、幸せが見つかるヒントに。(a)
●小島洋祐 監修●金の星社(2025年9月)●19×14.9cm/127頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:小学校中学年から
街なか、学校、友人関係などでのちょっとした行動が犯罪になる可能性を教えてくれる図鑑。通せんぼは「追随等の罪」、相手に貸した物を黙って持ち帰ると「窃盗罪」、空き家を勝手に秘密基地にしたら「潜伏の罪」だが、雨宿りや不審者から身を隠すためならOKなど、日常の何気ないことに罪名があって驚き。周りの大人に注意される機会も少ない昨今、行動規範となる情報を大人も一緒にどうぞ。(瑞)
●櫻井鼓 著●WAVE出版(2024年11月)●18.8×12.9cm/159頁●定価1,500円(税込1,650円)
「性的グルーミング(わいせつ目的で若者を手なずける行為)」の加害者が、被害者との「信頼関係」を築く手口は悪質。SNSによって複雑化・巧妙化するその手口を、犯罪心理の専門家が具体例を用いて解説。被害者を周囲から隔離させ、加害へと発展する流れは大人であっても怖さを感じる。自身の「おかしいな」「いやだな」と思ったことを書き出して理解することも身を守るのに有効です。(薫)
●額賀澪 作 satsuki 絵●ポプラ社(2025年6月)●18.8×13.4cm/239頁●定価1,600円(税込1,760円) ※対象年齢:小学校高学年から
夏休み、小学校の図書室に中学生のフミちゃんがいます。宿題の読書感想文を書くために本を借りに来た小学生5人に、次々と感想文を書くためのアドバイスをしていきます。「書く」ことで自分の本当の気持ちを見つけていく物語。最後は、フミちゃん自身も自分の本当の気持ちを見つけます。物語としてもおもしろくて、感想文の書き方の参考書としても◎です。巻末にフミちゃんの特別教室付き。(由)
●荒井真紀 文・絵●金の星社(2011年6月)●24.6×21.5cm/32頁●定価1,400円(税込1,540円) ※対象年齢:幼児から
小学校1年生で学習する「あさがお」の観察絵本。美しく緻密な絵が魅力的で、あさがおが芽吹き、成長し、いのちをつないでいく様子を、すみずみまで、存分に、観察できる。種を割って土中を進む根の白さや、空に向かってのびるつるのたくましさ、夜明けとともに少しずつ開いてゆく花の可憐さ。身近な植物のハッとするような姿を、子どもと一緒に大人も楽しんでみたくなる一冊。(理)
●sachi_homemade 著●翔泳社(2024年6月)●25.7×18.3cm/127頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:小学校中学年から
おいしいスイーツができる秘密を科学が教えてくれるレシピ本。コーヒーを淹れるのが趣味の小4娘は、本書で一番簡単なツートーンコーヒーを作りました。二層のコーヒーができたと無邪気に喜んでいましたが、数か月後に「海で泳ぐと浮きやすいのも関係ある?」と気づき、自由研究のテーマにしていました。手を動かすということには、大人の思惑を超えて何かにつながる可能性があるのでしょう。(法)
●矢野アケミ 作・絵●すずき出版(2025年4月)●20.6×28.2cm/24頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:幼児から
ある日、虫たちにつなひき大会の招待状が届きます。野原や森、水辺などに暮らす虫たち100ぴきが、一本杉の前に大集合します。それぞれの虫の絵に、虫の名前がひらがなで添えられ、生息場所も自然にわかるようになっています。つなひきのつなに沿ってずらっと並んだ虫の姿と表情が楽しい。観音開きのしかけがあり、横長の大画面で虫たちのつなひき大会を楽しめる絵本です。(春)
●グリム兄弟 原作 M・ジーン・クレイグ 再話 バーバラ・クーニー 絵 もきかずこ 訳●ほるぷ出版(1979年6月)●26.4×18.8cm/48頁●定価1,800円(税込1,980円) ※対象年齢:幼児から
王様が魔法使いとの約束を守らなかったため、ロバの姿で生まれた王子。努力してリュートの名人になりますが、その姿を王と王妃に疎まれひとり旅に出ます。ある日、立派なお城の王様とお姫様の前でリュートを演奏します。ロバの姿であることや親の無理解があっても前に進み、真実の愛に出会って幸せをつかみます。悩み多きティーンエイジャーに手渡したい優しく切ない自立の物語です。(由)
●しおたにまみこ 作・絵●偕成社(2025年8月)●29×19.3cm/32頁●定価1,500円(税込1,650円) ※対象年齢:幼児から
『たまごのはなし』の作者が制作に2年以上かけた新作。油彩で描かれた「くも」や空がとても美しい。「くも」には手足があり、日々悠然と、まさに世界を股にかけていく。たゆたいながら歩く姿は不思議と違和感がなく神秘的。そんな様子を眺める子どもが「くも」と仲良くなろうと凧を飛ばし……果たして何を考えているのかわからない「くも」と通じ合えるのか?「くも」の日常をお楽しみあれ!(瑞)
●武田康男 監修・写真 小杉みのり 構成・文●岩崎書店(2024年7月)●21.1×20.7cm/33頁●定価1,300円(税込1,430円) ※対象年齢:幼児から
虹はなぜできるのでしょう?「にじは、あめのカーテンにうつった たいようのひかりなんだよ」。きれいな虹の写真に、詩のような文章で虹のひみつを教えてくれる科学絵本です。雨粒の中の小さな虹、海にかかる大きな虹、夜に見える虹、虹のような彩雲。巻末には詳しい解説もあり、科学的に虹のできるしくみや探し方もよくわかります。雨上がりのお散歩が楽しみになる絵本です。(由)
●佐藤克文 文 木内達朗 絵●福音館書店(2020年10月)●25.6×19.6cm/40頁●定価1,300円(税込1,430円) ※対象年齢:小学校中学年から
海洋生物に小型記録計を装着して生態を調べる「バイオロギング」。本書では、その記録から解明された動物たちの知られざる姿を紹介。アザラシが長時間深くもぐることや、猛スピードで泳ぐと思っていたペンギンの速度が、実は人間の早歩き程度であることなど、従来のイメージとは違う印象に驚きました。海洋生物に興味がある子どもたちの好奇心を広げ、探求のきっかけとなりそうな一冊です。(C)
●もち 著●さくら舎(2025年7月)●21×15cm/119頁●定価1,800円(税込1,980円)
著者のもちさんは熱帯魚屋でマダコが餌をもらう様子に一目ぼれ。緻密で精密に餌をキャッチする仕草に品格を感じ、タコと一緒に暮らしたいと飼育を始めた。タコは賢く好奇心が旺盛で飼い主との触れ合いが大好き。水槽越しにハイタッチ、タコの動きを拍手で褒めたり、水槽内で握手もできる。他にもさまざまな驚きの能力が写真とイラストで紹介され、種を超えた友情・愛情・ドラマが堪能できる。(か)
●ほし☆みつき 著●自由国民社(2014年11月)●18.3×25.7cm/71頁●定価1,200円(税込1,320円)
カラフルでコロンと丸いいろんな海の生き物が勢揃い!まるいボディは共通で、その基本の作り方が写真付きで丁寧に解説されています。少しの糸でできるから余り毛糸などでぜひチャレンジしてみて。一作目は苦労しても、作れば作るほど要領がわかって楽しさも増すことと思います。太目の糸で大きく作るもよし、小さく編んでぶら下げても。気がつけば自分だけの水族館ができあがっているかも。(空)
●やすこーん 著●玄光社(2024年6月)●21×15cm/159頁●定価1,800円(税込1,980円)
日頃、時間に追われて移動はスピード優先、乗車時間は短く「ひかり」より「のぞみ」と、そんな旅の方には目からうろこの鉄道旅の本です。大人の休日倶楽部パスは有名ですが、週末パス、休日おでかけパスなどのおトクなきっぷの買い方、寝台特急の乗り方、青春18きっぷでグリーン車に乗って日帰り旅など、鉄道旅を楽しむ情報満載です。ひとりで楽しむのみならず友人とゆっくり旅もいいのでは。(深)
●鈴木伸子 著●大和書房(2025年9月)●15.1×10.6cm/251頁●定価840円(税込924円)
東京を味わい尽くすには、自由度の高いひとり散歩がいちばんと、下町から山手まで今昔を巡る15コースを紹介。作家ゆかりの渋いスポットやサブカルチャーの世界などバランスよくカバーし、「おいしいもの」があふれていて、じっとしてはいられない。再開発が進む中、30〜40代の地元っ子が路地で開いた街中華やフランス料理店が評判になっている中野、知らなかった。ふらり訪れてみたい。(a)
●阿川佐和子 他 著●大和書房(2025年3月)●15×10.6cm/268頁●定価800円(税込880円)
村上春樹やいとうあさこら41人の「ひとり旅」にまつわる短編集。気が向いたときに好きなページをめくるのが楽しい。時代背景もさまざまで、郷愁に浸るもよし、クスクス笑うもよし。枕の横に、また旅のお供にもおすすめです。実際の国や地名、レストランや宿屋が登場し「そうそう」と独りごちた後は、きっと次の旅に出たくなることでしょう。私は高橋久美子「一人旅のススメ」に共感です。(な)
●和田靜香 著●岩波書店(2025年12月)●17.3×10.8cm/241頁●定価960円(税込1,056円)
ケアは人間社会の存続に不可欠のものであり、女性がこの労働を担っていることが多い。女性らしさや母性に安易に結び付けられてしまい、無償や安価に抑えられている。資本制と家父長制はケアを担う女性を抑圧することから利益を得てきた。母子などケアが必要な人を真ん中に置き、世代を超えた親密なケア関係を支え、ケアに対する責任配分を社会制度として構築することを著者は提唱する。ケアする人とされる人が決して排除されることなく、ケア責任をどのように社会で配分していくか。ケアを中心とする民主主義を構築していくべきだ。(晴)
●岡野八代 著●岩波書店(2024年1月)●17.3×10.8cm/336頁●定価1,240円(税込1,364円)
中高年シングル女性——同居する配偶者やパートナーがいない40歳以上の単身女性(独身、離婚、死別、非婚/未婚の母、夫と別居など)——は、男性稼ぎ主モデルの社会構造の外側に置かれ、「透明な存在」として放置され、語られてもこなかったと著者。がんばって働いているのだから、安心して住める家がほしい、少しはおしゃれもしたいという「小さな幸せ」は個人の尊厳につながる。背景には日本の根深い家父長制からの性別役割分業がある。懸命に働き、生きながらも苦しいままの彼女たちの声はすべての人に関わること。そう気づかせてくれる一冊だ。(薫)
●熊谷頼佳 著●中央公論新社(2025年6月)●17.4×11cm/246頁●定価1,050円(税込1,155円)
著者である下町病院長が日々肌で感じている日本医療の過酷な実態と、直面する構造的課題が描かれた本だ。少子高齢化のみならず、医療費削減政策の結果起きた人手不足と採算割れにより地域の中小病院は次々と破綻に追い込まれている。このまま医療の空洞化が進めば2030-2040年には国民皆保険が実質破綻し、必要な医療・介護を受けられず行き場を失った高齢者が町にあふれるかもしれない。ではどうすればよいのか。著者は、医療崩壊を防ぐには徹底的な効率化に向けた改革が欠かせないとする。私たち国民も不要な医療は求めないなど賢くありたい。(星)
●スティーヴ・シャンキン 著 寺西のぶ子 訳●亜紀書房(2024年10月)●18.8×13cm/391頁●定価2,600円(税込2,860円)
「コイン」のプロローグで始まる本書は米ソ冷戦下のノンフィクション。1960年代両国は互いにスパイを配し偵察機や細工コインなどさまざまな手口で情報を収集。核爆弾や宇宙開発でしのぎを削る。ベルリンを巡る攻防とキューバミサイル危機でのケネディとフルシチョフは、回避を望むも威信をかけ一触即発の駆け引きを繰り返す。その苦悩と決断は臨場感、緊迫感とともに伝わる。国のトップはメンツを重視、軍のトップは功を急ぐ。時に権力は孤独で残酷だ。だが脅威を偶然と運に委ねるのではなく教訓とすべきと説く。エピローグ、訳者あとがきも必読。(よ)
●池澤夏樹 著 尾崎真理子 聞き手・文●岩波書店(2025年7月)●19.4×13.5cm/310頁●定価2,600円(税込2,860円)
作家・福永武彦の息子として生まれ、自身も40歳を目前に小説家に。沖縄で10年暮らし、個人編さんの文学全集を編む、そんな池澤氏への興味がまずありました。語られた個人史は、戦後の日本と世界の80年と重なり、振り返って折々の自分は何をし何を感じていたのかを追想することに。「小説家は社会の内部告発者と心得ています」「文学も平和も消耗品なんですよ。だから絶えず新しく作り続けなければ……」。氏の知的で軽やかな印象の内側にはこのような強い気概があったのですね。(水)
●日本文藝家協会 編●光村図書出版(2025年8月)●19.4×13.5cm/371頁●定価2,000円(税込2,200円)
毎年発売が待たれている人気シリーズのアンソロジー。前年に新聞や雑誌などの各媒体に発表されたエッセイの中から78篇を厳選して一冊にまとめています。執筆者はさまざまな分野で活躍する人たちで、何気ないエピソードやとっておきの話を通してその人柄や人生観に触れたり、知らなかった職業や世界との出会いがありました。バラエティに富んだ作品を楽しめるぜいたくな一冊。「自分好み」の作者を見つけるのも楽しいでしょう。わくわくする名文が詰まった玉手箱のようなエッセイ集です。(桂)
●森崎和江 著●岩波書店(2021年10月)●14.8×10.6cm/329頁●定価910円(税込1,001円)
聞き書きという先駆的なスタイルで石牟礼道子さんにも影響を与えた、著者のデビュー作。筑豊の炭鉱で働いた女性10人の「心の裂け目」に無心に耳を澄ませることで書きつけたそうです。日の光のありがたさを誰より知る百姓が地下で石炭を掘らなければならなかったことが、どれほど残酷か。男と同等に体を張って活躍してきた女性がなんと誇りに満ちてまばゆいか……安易な総括や憐憫を跳ねのける彼女たちの「生」の力を、語りならではの肌ざわりで感じる圧巻の読書体験でした。(法)
●梨木香歩 原作 近藤ようこ 漫画●新潮社(2025年9月)●21×14.9cm/261頁●定価1,700円(税込1,870円)
亡き友人の家の管理を任された、売れない作家の綿貫征四郎。山と田んぼに囲まれ、広い和風の庭が広がる家。そこで彼は不可思議なできごとに巻き込まれていく。河童のぬけがらを拾い、サルスベリの木に恋をされ、狸に化かされかけ、亡くなった友と再会する……この世とあの世がナチュラルにつながる、梨木ワールド全開の小説が漫画になりました。ちょっととぼけた主人公がいい味を出しています。(真)
●和歌山静子 作●童心社(2013年3月)●20.7×22.4cm/36頁●定価1,300円(税込1,430円) ※対象年齢:;幼児から
戦争について考える平和絵本。無数の軍靴が「ざっざっざっざっ」と音を立てて他国に侵入し、多くの人々や物を傷つける。やがて靴は傷み、それを履く兵士たちも死に、国も靴もボロボロに。力強いタッチの絵と簡潔な文章が、戦争の残酷さを浮き彫りにしている。刻々と変化する不安定な世界情勢の中で、最後の女の子の言葉「私の未来に戦争はいらない」が、私たちの願いでもあると強く感じる。(瑞)
●荻上チキ+栗原俊雄 著●中央公論新社(2025年7月)●19.1×13.3cm/215頁●定価1,700円(税込1,870円)
戦時下、いじめは大量生産されていた。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事の荻上氏が、戦争体験者の証言を集め分析、記者の栗原氏が背景を解説する。学校では体罰が日常化、軍隊では新兵いじめ・理不尽な暴力で自殺率世界1位。銃後では非国民という社会的排除や攻撃が横行した。敗戦はリセットとならず。今も残るいじめや差別を許容する規範をなくすことが重要で、身近ないじめや差別と対峙してこそ、戦争と向き合う作業に現実的な重みが加わると荻上氏は指摘する。(か)
●山田英生 編●筑摩書房(2025年7月)●14.8×10.5cm/388頁●定価960円(税込1,056円)
出征、疎開、空襲、戦地とは異なる戦い、蝕まれていく日常や平穏……。こうの史代、水木しげる、近藤ようこら12人の漫画家が、戦争をつまびらかに描く。中島京子氏は巻末エッセイで、子どもだった頃「大人は全員、戦争体験者だった」とし「戦争だけは嫌だ」という空気があったとも語ります。「銃後」を想像し、戦争回避に向けて私たちができることを考える。想像力を広げるのは今です。(薫)
●冨原眞弓 著●筑摩書房(2025年7月)●19.3×13.8cm/427頁●定価3,000円(税込3,300円)
フィンランドが生んだ芸術家トーヴェ・ヤンソン。翻訳を通して個人的にも親交のあった著者が、8年の歳月をかけて書き上げた評伝です。その生涯と作品との関わりが、雑誌や手紙などの引用を交えて鮮明に描かれています。家族や友人、恋人からの影響。芸術家としての葛藤。そして度重なる戦争の影。風刺画の署名から生まれたムーミントロール。ムーミン谷の秘密を読み解く鍵が見つかります。(玲)
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